最終年度においては、2次元定常Navier-Stokes方程式の一様流周辺における適切性、およびHall項を伴う磁気流体方程式(Hall-MHD方程式)の定常解に関する研究を行った。 2次元定常Navier-Stokes方程式については藤井幹大氏(九州大学)と共同で、与えられた小さな任意の外力に対して、一様流(外力がゼロである場合の特解である定ベクトル場)に摂動を加えた形の解がスケール不変な異方性Besov空間の枠組みで一意的に存在することを示した。これは一昨年度に前川泰則氏(京都大学)と共同で示した回転流周辺における適切性とともに同方程式の可解な空間を新規に与えるものであり、先行研究が少ない2次元全空間における同方程式の適切性研究を進展させるものである。 一方Hall-MHD方程式の定常解についてはXin Zhang氏(中国・同済大学)・Jin Tan氏(フランス・CYセルジー・パリ大学)と共同で、Besov空間の枠組みで適切性・非適切性に関する研究を行った。適切性については定常Navier-Stokes方程式の場合と比べて条件を強くする必要があることが分かった一方、非適切性については研究代表者によるNavier-Stokes方程式の場合の結果を応用することができることを示した。Hall-MHD方程式については定常解の先行研究は極めて少なく、同研究の先駆けとなることが期待される。 研究期間全体を通じて、非定常問題に比べて未だ未解決な部分が多い定常流体が関わる方程式の適切・非適切性に関する研究を前進させることができた。特に2次元Navier-Stokes方程式について可解性を保証する新たな関数空間を得たことは、今後の同方程式研究の第一歩として有意義であった。
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