遷移金属触媒によるC-H結合の活性化を起点とした、新たな多成分反応の開発を目指し、研究に取り組んだ。前年度には、C-H結合を有する化合物、所望の置換基を持つジエン、およびアルデヒドにおける新規多成分反応を網羅的に検討し、アクリルアミド、ジエン、アルデヒド間における三成分連結反応を見出した。今年度は、前年に引き続いて、反応の収率、基質適用範囲などの改良や、ポリケチド天然物であるOasomysin A、Rhizoxin Dの部分骨格合成などへの展開研究を行った。 さらに、C-H結合の活性化を起点とした多成分反応による多置換イソキヌクリジンの合成法を、創薬に応用することを目指した研究にも取り組んだ。イソキヌクリジンは多環式骨格からなる三次元構造を持ち、多様な置換基の導入が可能なため、医薬品の骨格として高い潜在的価値があるが、イソキヌクリジンを含む医薬活性化合物はこれまでに報告されていなかった。そこで、イソキヌクリジンを有する医薬活性化合物を合成することを目指し、インシリコスクリーニングにおいてヒットした化合物を各種合成した。合成にあたっては、イミン、アルキン、アルケンなどを利用したC-H結合の活性化を起点とする多成分反応を用いることで、シクロブタン、トリアゾール、シクロプロパンなど、所望の置換基を有する17種類のイソキヌクリジン誘導体を得ることに成功した。そして、カリフォルニア大学との共同研究により、5つの化合物がオピオイド受容体に対して高い活性を有することを明らかにした。
|