研究課題/領域番号 |
21J00764
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 大士 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 医学史 / 日米交流 / 宣教師 / 女性医師 / キリスト教 / アメリカ人医師 / 海外医療協力 |
研究実績の概要 |
2021年度の最大の成果としては、2021年8月に法政大学出版局より刊行された単著『医学とキリスト教――日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』(448頁)である。本書は本研究課題の中心的な内容である日米医学交流について、アメリカ人医療宣教師の長期にわたる日本での活動の分析を通じて明らかにしたものである。同書のブックトークや合評会が、大阪市立大学、上智大学、国際基督教大学、中央大学などで開催され、参加者やコメンテーターから多くの有益なフィードバックを得ることができ、今後、日米の医学交流を検討していく上で分析すべき課題についても認識することができた。 単著出版に加え、本研究課題に関する報告を3本おこなった。まず、2021年9月には日本医史学会学術大会(オンライン)において、関東大震災後、アメリカ女性病院という団体が日本に対しおこなった医療支援について分析した。震災後のアメリカからの医療支援については、赤十字社によるものがよく知られており、アメリカ女性病院の活動についてはほとんど知られていなかった。本報告では、アメリカ女性病院の活動は、日本人女性医師や外国人宣教師との密接な協力のもとに進められていたことを明らかにした。 2021年10月には2nd Virtual Workshop “Women and Medicine in the Japanese Empire”(オンライン)において、戦前の日本人女性医師がアジアに活動範囲を広げていく様子を描いた。2022年3月にはAssociation for Asian Studies(AAS)Annual Conference(ハワイおよびオンライン開催)において、日本人医師が戦後に海外での医療活動を拡大していく様子について分析した。戦前・戦後に日本人医師が海外で医療を進めていく様子は、戦前の日本においてアメリカ人医療宣教師が活動していた様子と重なることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単著『医学とキリスト教――日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』を出版し、それに関する各種イベントでの参加者からのフィードバックにより、今後、研究を進めるに際して検討すべき課題が明らかになった。 一方、資料調査に関しては、調査を予定していた時期が「まん延防止等重点措置」などと重なったり、予定していた資料館・図書館が学外に開いていない状況が続いていたため、当初の予定通りには進まなかった。しかし、代わりに国会図書館での資料調査を増やすなどして、研究を停滞させずに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
もともと、アメリカでの資料調査を予定していたものの、2021年度には感染症の拡大により実施することができなかった。そのため、2022年度(あるいは2023年度)にアメリカでの資料調査の実施を目指す。また、国際的な研究を進めるために、今夏よりドイツ・ベルリン自由大学で在外研究をおこなう予定である。同大学はグローバルヒストリーに関心をもつ研究者が世界から数多く集まっているため、コロキアムなどでの発表を通じて、本研究をさらに進展させる。そして、2021年度の研究報告に基づき、2022年度中に論文の形にまとめることを目指す。
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