研究実績の概要 |
最終年度となる2023年度は、2023年9月30日をもって特別研究員を途中辞退するまでに資料調査、学会発表、論文執筆などをおこなった。とくに、2023年7-8月にかけてのドイツ研究滞在では、数多くの研究者と交流することができ、自身の研究を国際的な研究文脈に位置づけるヒントを得ることができた。ドイツ・ハイデルベルク大学トランスカルチュラル・スタディーズ・センターでは、ハラルド・フース教授、山本敬洋助教などと意見交換をおこなった。また、8月にフランクフルト大学で開催された東アジア科学史国際学会では、トランスナショナル・ヒストリーの観点から日本の科学史・技術史・医学史を議論するパネルを組み、戦前、日系アメリカ人女性が日本で医学を学んでいたことなどを報告し、参加者から多くの有益なコメントを得ることが出来た。 2年半の研究期間全体を通じ、まずは、単著『医学とキリスト教 日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』(法政大学出版局、2021年)を出版したことが最大の成果であった。出版後、多くの研究者あるいは一般読者から多くの反響を得、いくつかの学術誌にも書評が掲載され、書評や合評会でいただいたコメントは今後の研究方針を考える上で非常に有用であった。 次にあげられる成果としては、Food & Historyという国際雑誌に掲載された査読付き論文”Christianity, Good Health and Vegetarianism in Japan, c. 1900-45”の出版である。本論文は『医学とキリスト教』と大きく関係しながらも、同書に掲載することが出来なかった内容を独立の論文としてまとめたものである。同論文では、本研究課題の主題の1つである日米交流を、アメリカ人医療宣教師たちを通じて日本にもたらされた菜食主義という食文化に注目して論じたものであった。
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