研究課題/領域番号 |
21J01383
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武田 紘樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 重力波 / 重力 / 一般相対性理論 / 修正重力理論 / 拡張重力理論 / 重力理論検証 / 偏極モード |
研究実績の概要 |
本研究は重力波の偏極モード探査によって重力理論を検証することを目的としている。これまでのコンパクト連星合体からの重力波を用いた検証では、テンソル、ベクトル、スカラーモードが別々に探査されてきた。しかし、実際の拡張重力理論では、重力波はテンソル・非テンソルモードの混合になっているため、このような純粋な偏極モード探査では現実の拡張重力理論を検証することはできない。そこで我々は混合した偏極モードを、適切にパラメータ化した波形モデルを用いて探査することで、 より現実的な重力理論や重力現象の検証を進めている。特にスカラーテンソル理論などの基本的な拡張重力理論には追加のスカラーモードの存在を予言するものがある。双極子放射スカラーモード、四重極子放射スカラーモードとテンソルモードから成る偏極モードモデルを余分なエネルギー損失による連星軌道運動の補正を考慮して構築した。この波形モデルを用いて実データをベイズ推定することで、GW170814とGW170817に対して初めて一般相対性理論と無矛盾な強重力場域における付加的なスカラーモードの振幅への制限を与えた。また、コンパクト連星合体からの重力波偏極モード探査における重ね合わせの原理検証を実施した。現在はより一般的なモデルの構築のために結合エネルギーの補正とストレス・エネルギーテンソルの修正を考慮した生成過程のスカラーテンソル偏極モード波形の構築を進めている。さらに、これまでの生成過程における重力波偏極モード探査を発展させ、重力波の伝播過程における偏極モード探査検証の定式化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の本研究課題の計画通り、混合偏極モードのパラメータ化を実現した。実際に構築したモデルを用いて実データを解析し、初めて強重力場での制限を得ることができた。さらに、偏極モード検証における重ね合わせの原理検証も共同研究者と協力して進めた。また、生成過程での偏極モード検証を発展させて、伝播過程で偏極モードを検証することで宇宙の非一様・等方性を検証するという新たな着想にも至った。以上のような実績を踏まえ、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、スカラーテンソル混合偏極モードのパラメータ化を実現し、実際に構築したモデルを用いて実データを解析し、初めて強重力場での一般相対性理論と無矛盾な観測的制限を得ることができた。しかし、現在のモデルではスカラーモード放射に伴う余分なエネルギー損失による連星軌道運動の補正は考慮されているが、結合エネルギーの補正とストレス・エネルギーテンソルの修正が考慮されていないために一般的なモデルとは言えない。そこで2022年度はこれらの効果を考慮してより一般的な波形モデルを構築する。そして、その構築した波形モデルを用いて実データを解析し、より多くの理論に対して重力波の自由度の観測的制限を与える。
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