研究課題/領域番号 |
21J01450
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石崎 渉 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 高エネルギー天体物理学 / ガンマ線バースト / マルチメッセンジャー天文学 / 連星中性子星合体 / ブラックホール |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ショートガンマ線バースト(sGRB)の中心エンジンの正体を明らかにするために、sGRBのプロンプト放射(典型的には継続時間2秒程度)の後にみられる、10秒から10000秒程度と比較的長く続くX線放射に注目して研究を行っている。 本年度は、連星中性子星合体の後の降着現象に注目し、その詳細を調査し2報の雑誌論文にまとめ報告した。 1報目は、連星中性子星合体の放出物質のうち、中心天体の重力を振りきれなった物質の降着(fallback降着)について議論したものである。連星中性子星合体では、放出物質の中でr過程元素合成という重元素の合成が効率的に起こること、またそのような重元素が放射性崩壊によって降着物質を加熱することが分かっている。我々は、この加熱がfallback降着に与える影響をかつてなく詳細に調べ、加熱によって降着が抑制されるという事実とその時間スケールを広いパラメータ領域で明らかにした。 2報目は、連星中性子星合体GW170817およびそれに伴うsGRBであるGRB 170817Aの3年に渡るX線観測において報告された、X線光度曲線にみられる超過成分の新しい解釈を提示したものである。GRB170817Aの光度曲線は、ジェット残光モデルで良く説明できていたが、合体後2年から3年のX線光度曲線にモデルからの超過成分が観測されるようになった。直ちに提示された「連星合体に伴う放出物質が星間物質と直接相互作用して輝く」という解釈は、予言される電波光度曲線における超過成分が一向に観測されないという問題点を含んでいた。我々は新たな解釈として、fallback降着により形成された降着円盤からのX線放射というシナリオを議論し、X線光度曲線モデルを構築し、現実的なパラメータの範疇で種々の観測事実を矛盾なく説明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の課題として当初の予定していた内容(fallback降着におけるr過程元素の崩壊熱の影響の調査)に関して、雑誌論文として出版することができただけではなく、次年度の課題として計画していた内容に関しても雑誌論文として出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
GRB170817Aは、現在も継続的に観測が行われており、今後も新たな観測結果が得られることが期待できる。2報目として出版した論文で議論した内容では、特に放射モデルにおいて非常に単純化したものを仮定しているため、今後も最新の観測結果に注意をはらいつつモデルの詳細を詰めていく。
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