研究実績の概要 |
Chandra 衛星で2000年、2003年、2007年、2009年、2015年に撮影された Tycho の超新星残骸の観測データを解析したところ、knot-like の熱的放射が15年の間に増光していることを発見した。これらは大きさが2 秒角程度であり、 SNR 北東部のリム付近に位置する。knot 構造を星間物質由来と仮定したモデルでフィッティングした結果、スペクトルをよく再現することができ、一部の knot 構造の電子温度は、2000年から 2015年の間に ~0.2 keV から~0.7 keV まで上昇していることがわかった。これを受け、knot 構造と Hα 輝線放射のイメージを比較すると、良く相関していた。この領域における Hα 輝線は、順行衝撃波と星間空間の中性ガスが相互作用して放射すると考えられている (Ghavamian et al. 2000, Knezevic et al. 2017)。熱的 X 線プラズマの局所的な時間変動は Cassiopeia A でも見つかっており、数年単位での電子温度上昇 (Rutherford et al. 2013) や可視光帯域との相関性 (Patnaude & Fesen 2007, 2014) という点でも類似している。 クーロン加熱モデルとの比較から、knot 領域での無衝突電子加熱の効率を割り出すことに成功した。この結果から、knot 領域では先行研究と矛盾のない程度の効率で無衝突加熱が起こっていることがわかった。 この研究結果について、いくつかの研究会で発表を行い、査読論文を執筆・投稿した。
|