研究課題/領域番号 |
21J20063
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青木 啓輔 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 鏡像スクリーニング / VHH抗体 / 鏡像タンパク質 / ファージディスプレイ / 免疫原性 / 体内分布 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、免疫原性低減型の医薬品候補化合物の探索を目指し、抗体の機能を有する最小ドメインとして知られるVHH抗体の鏡像分子「鏡像VHH抗体」の開発研究を行った。これまでにスキャフォールドとなる鏡像VHH抗体の化学合成プロセスの構築に成功しており、本年度は鏡像VHH抗体の熱安定性・免疫原性・体内動態に関する特性評価を実施した。また、疾患の原因となる標的分子に対して特異的に結合する鏡像VHH抗体のスクリーニング系の構築に取り組んだ。 まず、化学合成したVHH抗体に含まれる2つのシステインをジスルフィド結合で架橋する条件を精査したのち、熱安定性とリガンドに対する結合能を評価した。続いて、化学合成した鏡像VHH抗体をアジュバント存在下でマウスに投与することで免疫原性を評価した。また、放射性同位元素で標識した鏡像VHH抗体を合成し、マウスにおける体内分布試験を実施した。以上の実験により、鏡像VHH抗体が天然型VHH抗体と同様の特性を有しつつ免疫原性を低減させた医薬素材になりうる可能性が示された。 続いて、VHH抗体提示ファージライブラリーの作成と探索条件の検討を行った。ライブラリーのランダム領域や固定化・洗浄条件について種々検討を行った結果、複数の標的タンパク質に対して特異的に結合するVHH抗体を取得する条件を見出した。次に、化学合成した疾患関連タンパク質の鏡像分子に対するスクリーニングを実施したところ、疾患関連タンパク質の鏡像体に特異的に結合するVHH抗体の配列の取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学合成した鏡像VHH抗体とその誘導体を用いて、各種試験を実施し、鏡像タンパク質特有の低免疫原性を有していることと、天然のVHH抗体同様の体内動態を示すことを確かめることができた。これらの結果から、鏡像VHH抗体の医薬素材としての妥当性を実証できた。また鏡像VHH抗体の取得に向けた探索条件を構築することができ、ヒット配列を取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に取得した、疾患関連タンパク質の鏡像分子に対して特異的に結合するVHH抗体の配列情報をもとに、Dアミノ酸から構成される鏡像VHH抗体の化学合成を行う。適切な立体構造を有していることをCDスペクトル測定によって確認したのち、天然型標的タンパク質に対する特異的結合を表面プラズモン共鳴法によって測定する。続いて、標的タンパク質と受容体との相互作用の阻害能について評価を行い、鏡像VHH抗体が医薬品の候補化合物となりうることを実証する。さらに、疾患関連タンパク質に特異的に結合する鏡像VHH抗体が他の鏡像VHH抗体と同様に低免疫原性の特性を有することを示すために、マウスに対する免疫試験を実施する。引き続き、化学合成した鏡像VHH抗体を用いて、体内動態改善のための分子設計に取り組む。
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