最終年度は、主に昨年度得たガウス乗法カオスによる時間変更過程の収束をより一般の確率過程に適用できるよう以下のように改良を行った。 1.昨年度は元の確率過程がレヴィ過程であるという強い制約があったが、証明に用いていたガウス場の定常性の代わりに正値連続加法的汎関数(PCAF)と時刻との比が時刻無限大で1に収束することを示し、この性質とスコロホッド位相の緊密性の条件とを組み合わせることでレヴィ過程であるという仮定を取り除いた。 2. 昨年度は主結果の具体例として「広義一様収束位相を考えたとき、Z^2格子上のリウヴィル単純ランダムウォークのスケール極限が2次元のリウヴィルブラウン運動である」ことをL^2レジームの半分でしか示せていなかったが、以前の証明で用いていたグリーン関数の性質の代わりにPCAFをより精密に評価することで、主結果の仮定に用いていたグリーン関数の条件を緩めることができ、L^2レジーム全体で証明することができた。 これらの結果を論文としてまとめ、現在は国際誌に投稿中である。また、本論文をプレプリントとしてarXivで公開した。更に国内外の研究集会で講演を行い、結果を周知した。また、昨年度論文にまとめたガウス場のマルコフ性とディリクレ形式の局所性の条件に関する論文がOsaka Journal of Mathematicsに掲載された。
研究期間全体を通じては、ディリクレ形式に関連したガウス場とガウス乗法カオスとそれらに対応した確率過程の収束について一定の成果を得た。
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