最終年度はGroundBIRDの物理観測で使用する全検出器ウエハ(145 GHz帯域6ウエハ、220 GHz帯域1ウエハ)を望遠鏡にインストールして物理観測を開始させた。その後、初期評価の一環として、月の観測データを用いて全ウエハで期待通りの観測ができていることを確認した。また、データ解析手法の工夫により、今まで検出できていなかった木星と金星の信号を検出することにも成功するなど、物理解析において重要な成果を挙げた。並行して、2022年に取得したデータを用いて、新たに開発した月を用いた視線方向の較正手法でGroundBIRDの要求を満たす較正ができること確認し、本成果を学術論文として公表した。偏光角の較正においても、望遠鏡の視線方向の情報を用いて較正を行う手法を考案した。これらの手法で較正した視線方向と偏光角を用いて、実際の時系列データに含まれるノイズの評価とその削減手法の開発を行った。開発したCMB解析のパイプラインを用いて、CMBの異方性の検出効率を86%以上に維持しつつノイズの大きさを3桁削減できるノイズの削減手法の開発した。検出器開発に関しては、製作したβ-TaのMKIDの超伝導転移温度とノイズの評価を行い、100 GHz帯域の信号に感度があること、NbTiNと組み合わせることでGroundBIRDのノイズの要求を満たせることを確認した。 研究期間全体を通して、GroundBIRD実験をコミッショニングの段階から、全検出器ウエハを用いた物理観測を開始させるところまで、望遠鏡の性能が期待通りであることも確認しつつ進めることができた。その中で、月を用いた新たな視線方向の較正手法の開発も行い学術論文として公表した。検出器開発に関しても100 GHzの帯域を測定できるβ-TaのMKIDを独自に開発し、今後の望遠鏡のアップデートの礎を築くことができた。
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