研究課題/領域番号 |
21J21188
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 幹生 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 古代ローマ / ローマ帝政 / 記憶 / アウグストゥス / カエサル / 古代史 / ローマ共和政 / 政治 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず前年度に第89回西洋史読書会大会にて口頭発表を行った研究内容をまとめ、ティベリウス期の歴史家ウェレイウス・パテルクルスの『歴史』にみられるアウグストゥスの記憶が再構成された一背景を考察する論考として形にし、査読付き学術雑誌『史林』に投稿した。 そして、次の研究として、ネロ期におけるアウグストゥスの記憶の在り方に関する研究を進めていった。ネロの家庭教師で政治顧問であったセネカの著作に注目し、この主題に取り組むために、本年度はセネカの諸著作におけるアウグストゥスの描写の在り方に関する先行研究の整理ならびにセネカの諸著作の読み込みを行い、本研究のアプローチ方法の確立に努めた。その結果、先行研究には、セネカが一貫したアウグストゥス観をもっていたと想定している点や、前帝クラウディウスの記憶がセネカによるアウグストゥスの記憶利用に及ぼした影響を軽視している点があるといった問題点を析出した。そこで、クラウディウスとアウグストゥスの両者が頻繁に登場するセネカの著作、『アポコロキュントシス』を対象に分析を行い、両者の記憶がいかに対比関係として提示されているかについて、第21回古代史研究会大会(2022年12月)にて口頭発表を行った。 また、本年度は日本西洋古典学会に報告要旨を提出し、翌年度(2023年6月)に開催される、第73回日本西洋古典学会への口頭報告の申し込みを行った結果、翌年度の本学会での口頭報告を受諾された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これは、前年度に行われた第89回西洋史読書会大会での口頭報告の内容を、その際にいただいた質疑応答を踏まえてブラッシュアップすることで、ウェレイウス・パテルクルス『歴史』を尊厳毀損罪の裁判の文脈に位置づけ、ティベリウス期においてアウグストゥスの記憶が再構成された一背景を検討した結果を査読付き学術雑誌『史林』に投稿することができた。 また、本年度は、セネカの著作『アポコロキュントシス』を主な対象として、ネロ期におけるアウグストゥスの記憶に関する考察を進めていった。そのなかで、明らかになったアウグストゥスと前帝クラウディウスの記憶の対比関係について、第21回古代史研究会大会にて報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
翌年度は、現在、査読付き学術雑誌『史林』に投稿中の論説の修正を完了し、年度内に掲載ができるようにしていく。 続いて、セネカ研究とネロ期の政治情勢に関する研究文献を精読することで、セネカの著作を主な検討対象としたネロ期におけるアウグストゥスの記憶の検討をさらに推し進め、その検討結果をまとめたものを第73回日本西洋古典学会(2023年6月)で口頭報告を行い、同年度末に刊行予定の査読付き学術雑誌『西洋古典学研究』への投稿を目指す。
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