研究実績の概要 |
当初の予定通り,水耕栽培実験に基づくヤマタヌキランのAl3+耐性(以下,Al耐性)と低pH耐性の評価を行った.ヤマタヌキランと姉妹種であるコタヌキランの種子由来の実生を用いて,pH(=1.5, 2.0, 2.5, 3.0, 4.5)とAl濃度(= 0, 50, 100, 250, 500μM)が異なる溶液にて水耕栽培を行い,根の伸長過程を記録した.その結果,ヤマタヌキランではpH < 2.0で生育が阻害された一方,コタヌキランではpH < 3.0で著しい生育阻害が認められ,両種で低pH耐性に顕著な差が見られた.それに対して,Al耐性については両種とも100μMを超える濃度条件下でも生育阻害は認められず,両種の間でAl耐性に差が認められなかった.以上の結果より,ヤマタヌキランの火山性強酸性土壌への適応には低pH耐性の獲得が重要な役割を果たしたことが考えられた.この結果は,Al耐性が強酸性土壌への重要な適応機構であるとする研究開始時の予想とは異なるもので,今後は低pH耐性に着目した適応機構の解明へと研究方針を変更する必要があるものと考えられる.この成果については,現在国際誌への論文投稿の準備を進めている. また次年度以降の強酸性土壌への適応に関わる遺伝的基盤の解明のため,参照配列となるドラフトゲノムの構築も行った.ナノポアシーケンサーより得たロングリードを用いて,ヤマタヌキランとコタヌキランの両種についてドラフトゲノムの構築を試みた.その結果,ヤマタヌキランでは480Mb・33本(もしくは34本)の染色体が38本のスキャホールドにまとまり,次年度以降のゲノム解析に十分なクオリティのドラフトゲノムの構築に成功した.こちらの成果については,日本生態学会第69回大会にて発表した
|