研究課題
本研究では、有機光触媒を利用することで、1)生体分子の脱炭酸型第3級アルキル化、2)糖の位置選択的C-H官能基化の開発を目的とする。1)では、有機光触媒による脱炭酸型第3級アルキル化をペプチド、核酸塩基誘導体を中心とした生体分子に適用する。2)では、一電子還元を受けて求電子的なラジカルを生じる置換基を糖に導入し、分子内水素原子移動をRPC機構に組み込むことで、有機光触媒を用いたC-H官能基化反応を開発する。本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。1)についての検討中、有機光触媒、コバルト触媒、銅触媒を活用したアルケンのヒドロアルキニル化反応を見出した。2)について、テトラヒドロフラン溶媒中、空気とアルコール求核剤存在下において、反応を試みたところ、目的物は得られなかったが、副生成物として、テトラヒドロフランとアルコール求核剤のカップリング体と思われるものが、低収率ながら得られた。メカニズムとしては、まず空気中の酸素に対して光触媒からの一電子移動が起こることでスーパーオキシドラジカルアニオンが生じる。スーパーオキシドラジカルアニオンがテトラヒドロフランと分子間水素原子移動を起こしてラジカルを発生させる。発生したラジカルは光触媒由来のラジカルカチオンと一電子移動を起こすことで、カルボカチオン中間体が生じ、アルコール求核剤とカップリング反応を起こす。以上のメカニズムにより、副生成物としてテトラヒドロフランとアルコール求核剤のカップリング体が得られたと考えられる。分子内水素原子移動を起こすことを目的とした官能基を必要とせずに、空気中の酸素を利用して水素原子移動を起こすことができる反応として、当該の反応の最適化を試みた。
2: おおむね順調に進展している
研究者は、当該年度、糖の位置選択的C-H官能基化の開発において、テトラヒドロフラン基質の反応において有用な予備的知見を得た。
1年目から引き続き、ペプチドと核酸塩基の第3級アルキル化や有機光触媒を用いた糖類の位置選択的C-H官能基化を検討する。本年度から、核酸医薬品中間体やヌクレオシドの第3級アルキル化や多糖類や配糖体を用いた位置選択的C-H官能基化の開発にも着手する。また、昨年度見出した 、有機光触媒、コバルト触媒、銅触媒を活用したアルケンのヒドロアルキニル化反応の論文化を目指す。3つの触媒それぞれの構造変換を行いながら、化学収率や選択性を向上させる。複雑な構造を持つ基質を用いて、狙った位置で反応が起こせるかどうか調べる。 より創薬研究へと 昇華できる反応とするために、複雑系生体関連分子の後期修飾を視野に入れた検討を行う。 末端アルキンの代わりに他の炭素求核剤の適用を検討する。
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Org. Lett.
巻: 23 ページ: 5415_5419
10.1021/acs.orglett.1c01745