研究実績の概要 |
2型糖尿病モデルマウスRCS10の糖尿病発症・進行過程における病態の変化を詳細に検討した. 具体的には, 2型糖尿病モデルマウスRCS10における糖尿病の発症・進行過程における血糖値およびインスリン分泌プロファイルの変化を解析した. 結果, 脂肪負荷食群では, 肥満によるインスリン抵抗性増加を反映する形で, 血糖値上昇前にインスリン値が上昇し, その後、ある週齢を境に減少に転じ, 以後経時的に減少していくことを確認した. またインスリンが減少に転じる少し前から, 血糖値値が上昇しはじめ, その後経時的に上昇することも確認しえた. これは, 肥満の増悪によるインスリン抵抗性増大を, 初期にはインスリン過大分泌により代償することで血糖値を防ぐが, あるタイミングで代償機構が破綻し, その後経時的に耐糖能が増悪していくとする, Kendallらの提唱する2型糖尿病の自然史に合致した所見であり, RCS10のモデルマウスとしての適正が確認された. 現在病理学的検討を進めており, これらの血糖値, インスリン値の変化に, 病理所見上のインスリン分泌膵β細胞量(BCM)との関係を評価している. 更に, 2型糖尿病の発症・発展に重要な役割を果たし, 本研究の重要なファクターである肥満に関連し, 肥満がCOVID-19重症化を引き起こす機序について, ヒトゲノムを用いた国際共同研究を行った. 2023年2月に成果物を筆頭著者として学術報告しており(Yoshiji et al. Nat Metab 5, 248-264 (2023)), 研究の広がりを見せている. 2023年度も糖尿病・肥満の代謝異常を統合的検討していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2型糖尿病モデルマウスRCS10の糖尿病発症・進行過程における病態の変化を詳細に検討, 糖尿病の発症・進行過程における血糖値およびインスリン分泌プロファイルの変化を解析しえた. また, 更に本研究の重要なファクターである肥満に関連し, 肥満がCOVID-19重症化を引き起こす機序について, 国際共同研究を行い学術報告しており, 予定以上の成果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に続いて, RCS10モデルマウスを用いて糖尿病 発症・進展過程における膵β細胞量の経時的変化の病理学的・分子生物学的メカニズム を解明する. 具体的には, 2型糖尿病モデルマウスRCS-10の糖尿病の発症・進展過程を, 膵β細胞量の経時的変化の知見も考慮しつつ, 糖尿病 発症前 (膵β細 胞の代償性増殖期), 発症直前・直後 (膵β細胞量のピーク期), 発症後進行期(膵β細胞量減 少期)に分ける. そして, これ らの複数ポイントにおいて, 糖尿病発症群ならびにコントロール群の2群で, 膵β細胞の病理学的検討, 発現解析を行う (設備使用 費・試薬費 ・器具費・動物飼育費・分析費). 後者の解析としては, 遺伝子発現量の時系列変化比較・2群間比較等を行う.
また2022年度には, 2型糖尿病の発症・進展に重要な役割を果たす肥満に関連して, 肥満がCOVID-19重症化を引き起こす機序について, 国際共 同研究を行い学術報告を行った. 2023年度も引き続き, 肥満の病態についても, ヒトゲノム・プロテオームを用いた統合的解析を実施し, 2型糖尿病・肥満の代謝異常を検討していく.
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