研究課題/領域番号 |
21J22348
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樋沢 規宏 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 集団運動 / 生成座標法 / 共役運動量 / 平均場理論 / 集団部分空間 |
研究実績の概要 |
本年度は動的生成座標法(DGCM)に基づく集団運動の記述における、共役運動量の寄与に関する研究を行った。 まず、DGCMの数値計算を実行するために、Gogny有効相互作用を用いた拘束条件付き3次元Hartree-Fock計算のコードを開発した。これを元に、DGCMの実装方法を考案し、16Oの四重極振動に対して数値計算を実行した。従来の手法である共役運動量を考慮しない生成座標法(GCM)との比較を行ったところ、DGCMの方がより低いエネルギーを与えるという結果が得られた。また、四重極演算子に対する和則を計算したところ、DGCMの方が理論的に期待される値に近い結果を与えた。また、DGCMの集団波動関数を調べると、運動量方向にも広がりを持つことが見て取れた。以上は、共役運動量が16Oの四重極振動において重要な自由度であることを支持する結果である。 また本年度は、Hilbert空間の構造に着目することで、DGCMの有効性を調べた。GCMやDGCMは配位混合法の一種であり、配位の線型結合で張られるHilbert空間(集団部分空間)が本質的な自由度である。しかしながら従来のGCMには、特別な場合を除き集団部分空間の構造が不明であるという問題が存在する。これは予期せぬ量子もつれをもたらす原因となり、集団運動を記述する上で大きな障害となりうる。そこで本年度は、テンソル積という観点から集団部分空間の構造を解析した。この時、自然な境界条件の元で定義されるDGCMに対して、空間の構造を特定することに成功した。加えて、小振幅集団運動といった特定の条件下では、集団部分空間が、集団的な部分とそれ以外の単純なテンソル積で与えられることを明らかにした。このことは、DGCMでは人工的な量子もつれが生じにくいということを意味している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、四重極振動といった集団運動に対してDGCMを適用し、共役運動量の寄与を明らかにすることを目的としていた。本年度行ったことは、16Oの四重極振動におけるDGCMの数値計算、およびDGCMにおける集団部分空間の構造解析であり、両者共に共役運動量の重要性を裏付ける結果を与えた。特に集団部分空間の構造解析は、集団運動の詳細にあまり依存しない形で行ったため、四重極振動を含む様々な集団運動に対して適用可能である。以上のことから、当初の目的は達成したと言えるため、研究はおおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
大振幅集団運動といった、より多くの集団運動に対してDGCMを適用し、具体的な数値計算を実行するための準備として、計算コードの開発やテスト計算を行う。本年度開発した計算コードでは、配位の生成段階では核子の対相関の寄与を無視していた。大振幅集団運動を取り扱う場合、対相関を考慮した方が望ましいため、まずは計算コードの改良を行う。次に、この計算コードを四重極変形の大振幅集団運動に適用することで、共役運動量の影響を調べる。しかしながら、大振幅集団運動の場合、本年度と同様に拘束条件付き変分法を用いて配位の生成を行うと、集団部分空間にねじれが生じる可能性がある。そこでこの問題を回避する手法を、集団部分空間の構造解析の結果をもとに模索する。
|