研究課題/領域番号 |
21J22351
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
反保 雄介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 観測天文学 / 突発天体 / 激変星 / 矮新星アウトバースト / せいめい望遠鏡 / 分光観測 |
研究実績の概要 |
該当年度は,「観測と理論による降着円盤不安定性モデルの拡張 ---矮新星大統一理論を目指して」をテーマとする研究課題の1年目である。本年度は,観測的な手法により,矮新星アウトバーストの個々の特徴を理解し,その関連性を有機的に結びつけることを目的としていた。これら研究の結果,当該年度には2本の主著論文が出版され,また1本の共著論文が出版された。 主著論文1本目では,京都大学岡山天文台せいめい望遠鏡可視光面分光装置KOOLS-IFUで得られた17の矮新星アウトバースト初期の分光観測結果と我々の研究グループが主導する国際的な観測ネットワークであるVSNETを通じた測光観測をもとに,そのスペクトルの多様性と起源について議論した。 主著論文2本目では,特異な分光的特徴を持つ矮新星アウトバースト (V455 And)の2007年の分光観測結果について,その詳細な解析を行った,その結果,アウトバースト初期に見られた特異な輝線の起源として,これまで矮新星アウトバーストでの寄与が考えられなかった円盤風由来である可能性を明らかにした。 また,これらの研究結果をもとに2021年度は国際学会1回,国内学会4回の口頭発表を行った。 加えて,せいめい望遠鏡での観測提案もPIとして2期で計3件が受理され,これらの観測データの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は初年度であるため,研究実績は上記の通りである。 論文数や学会での発表回数は,当該年度当初に予定していた程度であるため,(2)おおむね順調に進展している。とした。また,今年度・次年度の研究遂行に向けた観測提案の実施や,特異な矮新星アウトバーストの観測,大規模サーベイデータのデータ処理も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①多様な矮新星アウトバーストの観測;昨年度は3つの特異な矮新星について,我々の研究グループが主導する国際的な観測ネットワークであるVSNET,京都大学3.8メートルせいめい望遠鏡,光・赤外線天文学大学間連携OISTERを活用した多モード観測を実施した。これらの観測データについて解析を行い,国際誌に論文として出版する。また,過去に特異なアウトバーストを起こした天体が再度アウトバーストを起こした場合や,新たに特異な性質を持つアウトバーストが発見された場合についても,VSNET,せいめい望遠鏡,OISTERを活用した観測を呼びかけ ToO 観測を発動し,同様に長期間の詳細な観測を行う。これらの天体についても,随時解析を行い,論文として出版する。 ②静穏期の観測データ解析;大規模サーベイデータを用いて,静穏期からアウトバーストまでの色や等級の時間変化について,色等級図上での進化に着目して,解析を行う。また,はせいめい望遠鏡を用いた矮新星の静穏期の測光・分光観測を行い,これらの観測データから,個別天体の降着円盤の状態について,その時間進化に着目した解析・議論を行う。これらの観測データを統合的に解析することで,静穏期とアウトバーストの性質の観測的な関係性を明らかにし,静穏期とアウトバーストを繋ぎ合わせる物理状況に迫る。なお,静穏期に特徴を持つ天体が発見された際には,そのアウトバースト周期から,今後の観測計画を随時検討し,観測を行う。
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