研究課題/領域番号 |
21J22696
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松林 錦 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子捕捉療法 / 中性子 / γ線 / シンチレータ / 電離箱 / 放射線計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、中性子とγ線の混合場であるBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)照射場に適したリアルタイム線量評価のために、熱中性子に高感度な結晶シンチレータの選定と高速中性子ガス検出器のシミュレーション計算による最適化を実施した。 結晶シンチレータは、熱中性子に感度を持ち蛍光減衰時間が比較的短い結晶を選定し育成を行った。選定した結晶は潮解性を有するため、外気に接しないような構造を検討した。シンチレータは石英ファイバーの先端に設置することで熱中性子検出器とするが、BNCT照射場におけるシンチレータ自体の特性を評価するため、育成した結晶シンチレータをそのまま光電子増倍管に設置して測定を行った。照射試験は中性子およびγ線照射場にて実施し、現在解析中である。次年度はシンチレータを石英ファイバーに設置しBNCT照射場での照射試験を実施し評価結果のとりまとめを行う。 高速中性子ガス検出器は、γ線の寄与を低減するような構造をモンテカルロシミュレーションによって最適化した。シミュレーション計算では、γ線の寄与が1%以下となり、高速中性子を高い感度で測定できるように、検出面の大きさや極板間距離、構造体の材質、厚みなどを最適化した。その成果を国内および国際学会にて発表し、国際学会ではFairchild賞を受賞した。現在は、最適化した検出器を製作中であり、次年度は製作した検出器の電圧や温度による特性試験を行い、構造の再検討を行う。またγ線場およびBNCT照射場において、照射試験を行い評価結果のとりまとめを行う。 高い強度で中性子とγ線が混合する照射場において、γ線の寄与を除去し高い中性子感度を有する検出器の開発は、検出器の材質、大きさの選定において探究的な要素が強い。本年度で実施した研究は、中性子の放射線計測の分野においても意義のある研究であり、他の分野への波及効果も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶シンチレータの製作は、国内の専門分野の研究者と共同で実施することから、新型コロナウイルス感染症拡大における出張の制限により、頻繁に結晶の育成を行うことができなかった。しかし、対象とする結晶シンチレータのプロトタイプ検出器の製作および特性評価を実施することができた。また高速中性子ガス検出器は、シミュレーションによる検出器構造の最適化に成功し、現在検出器を製作中であることから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
結晶シンチレータの制作は、育成した結晶を石英ファイバーに設置した熱中性子検出器を製作し、γ線場及びBNCT照射場において照射試験を実施する。対象とした結晶が比較的重い元素で構成されるため、γ線の感度は高い傾向にある。そのため、中性子感度を維持しつつ、軽い元素に置換できるような元素構成を検討する。既存のシンチレータと比較して、感度の良い検出器を製作できなかった場合には、他の結晶構造や検出器構造を検討する。 また、高速中性子ガス検出器は、最適化した検出器を製作し、電圧や温度による特性試験を行った後、γ線場およびBNCT照射場において照射試験を実施する。電圧や温度による特性試験では、暗電流の増加や電流値の時間的変動が生じた場合に、保護環や絶縁体構造の検討を行う。
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