研究課題
パーキンソン病(PD)は凝集したαシヌクレイン(αS)を主成分とするレビー小体の形成とドパミン神経細胞死を病理学的特徴とする進行性の神経変性疾患である。前駆期から発症に至るパーキンソン病の全自然史とその病態を忠実に再現しているモデルは未だ存在しない。申請者らが作製したαS遺伝子改変マウスはαSの発現上昇を反映した前駆期PDモデルだが運動障害は認めず、消化管へαS凝集体を投与した モデルでも伝播は限局的で、PD全自然史の再現にはαS凝集体の最適化が必要と考えられた。αS凝集体の違いが伝播能を規定する点に関して、αS凝集体を伝播モデルで使用するためにはsonicationにより細断化する必要があることが知られているが、次世代シークエンサー用のDNA fragmentationに使用されるhigh power sonicatorを使用することで極めて細かい凝集体を作成することができた。また、sonication時間を長くすることでより細かい凝集体を作成でき、それらはマウスの初代神経培養細胞を用いたin vitroにおける凝集体形成実験、あるいはマウス嗅球へのinjectionによるin vivoでの検証実験により、伝播能が高いことが実験でわかった。最も伝播能が高くなったのは30分間のsonicationであったが、長すぎるsonication(60分間以上)によって伝播能が下がることもわかった。FTIRではsonicationによる伝播能上昇がαSの凝集体の分解と新しいαSフィブリル断端の生成により説明できることが示せて、長時間のsonicationではβシート構造が破壊され、伝播能が低下したものと考えられた。これらの結果をまとめ、学会発表はすでに行っており、現在論文投稿中である。
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