研究課題/領域番号 |
21J22891
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原 征大 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | SiC / パワーデバイス / オーム性接触 / ショットキー障壁ダイオード |
研究実績の概要 |
報告者はこれまで、高温熱処理を施さずに形成した金属/高濃度ドープSiC界面における電気伝導機構の解析を行ってきた。前年度までの研究においては、高品質エピタキシャル成長層(エピ層)上に形成した電極における電気的特性の評価を行ってきたが、実デバイスのオーム性接触の多くが高濃度イオン注入層上に形成されることを念頭に置き、本年度は、リン(P)イオン注入により高濃度化したSiC上に電極を形成し、エピ層を用いる場合との差異を明らかにすることを目的として研究を進めた。 ショットキー障壁ダイオード(SBD)を作製し、その電流-電圧特性を測定することにより、Pイオン注入SiCを用いたとき、同一ドーピング密度のエピ層を用いる場合と比較して、電流が数桁大きくなることを明らかにした。さらに、電気伝導機構の詳細な解析により、イオン注入誘起欠陥が形成する深い準位を介したトンネル(トラップアシストトンネル, TAT)がこの電流増大の主要因である可能性を見出した。また、界面での電流増大はオーム性接触形成において有用な特性であることから、接触抵抗率の評価用素子(TLM構造)の作製および解析を行った。その結果、Pイオン注入試料を用いたとき、同濃度のエピ層を用いる場合と比較して1桁程度低い接触抵抗率が得られることを明らかにした。さらに、仕事関数が低いMgを電極として用い、エピタキシャル成長の限界を超える高濃度(8e19 cm-3)の注入を施すことにより、実用レベルの低い接触抵抗率(2e-6 Ωcm2)を達成した。 以上の実験および解析により、オーム性接触形成におけるPイオン注入の優位性が定量的に明らかになった。また、本研究で得られた金属/SiC界面の電気伝導機構に関する学術的理解は、低抵抗SiCオーム性接触の設計および形成において非常に有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの報告者の研究により、高温熱処理を施さずに形成した金属/高濃度ドープSiC界面における電気伝導機構に関する理解が大きく進展した。本研究は、これまでに学術的理解が欠落していたSiCオーム性接触形成に関して非常に有益な知見を与え、低抵抗化に向けた設計指針確立のために不可欠な基盤となることが期待されるため、研究の進展は順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた金属/高濃度ドープSiC界面の電気伝導に関する物理的理解をもとに、電流の増大および接触抵抗率低減のための新規手法を、計算・実験双方を組み合わせたアプローチに基づいて提案し、低抵抗化のための定量的な設計指針の確立を目指す。
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