1. 代表的なネマチック液晶である5CBに対して蛍光粘度プローブ機能をもつFLAPを分散させ、相転移に伴う蛍光挙動変化の調査と、分散したFLAPの5CBに対する配向性を考察した。結果、5CBのネマチック-等方相転移に伴う局所粘度の変化を検出した。さらに5CBの分子配向に平行な向きにFLAPが励起状態で平面化しやすいことを示した。
2. 新たな機能分子系の構築を目標にナフトペリレンビスイミド骨格をCOTに縮環させたNPBI-FLAPを開発したところ、低極性溶媒では強い蛍光を示す一方、DMFなどの高極性溶媒中では消光することを明らかにした。過渡吸収スペクトルと電気酸化・還元に伴うラジカルイオン種のスペクトルを照合することで励起状態でV字型構造のままSymmetry-Breaking Charge Separationが起こって消光することを示した。
3. FLAPはπ共役部位が最適なスリップ角に調整されたカラムナーπスタッキング構造をとり、新規材料開発に利用される。本年度は、骨格が異なる3つのFLAPを合成し、未開拓であったFLAPのπスタッキングに伴うエネルギー安定化の見積りを行った。分岐アルキル基を導入したNPBI-FLAP_stはカラムナー集積しない一方、ナフタレンイミド骨格を両翼にもつNI-FLAPはカラムナーπスタッキングを形成した。フルオランテンイミド骨格を両翼にもつFI-FLAPの会合ではカラムナー集積せず、二量体の形成が示唆された。MDシミュレーションでも、NPBI-FLAP_stではカラムナー集積は形成しない一方、NI-FLAPはカラムナーπスタッキング構造が再現され、実験結果と整合した。さらに、NI-FLAPでは末端置換基がカラムナー集積を促進させている一方で、NPBI-FLAP_stでは阻害しており、集積によるエネルギー利得を定量的に見積もることができた。
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