ブルーベリーは房内で不均一に成熟が進むため成熟果実を手摘みする必要がある。果実成熟を人為的に制御できれば、収穫作業を効率化できる。本研究は果実成熟におけるDNAメチル化の役割の解明,および機能検証のための基盤整備を行った。 DNAメチル化阻害剤5-AzacytidineとABAを果実に処理すると,成熟が急速に進行した。無処理果実では成熟期にグローバルなDNA脱メチル化が発生した。またAGO4等RdDM経路に関わる因子の遺伝子発現がメチル化レベルに影響していること、5-Azacytidine処理がABAシグナル伝達を強化することでVcMYBA1等の成熟関連の遺伝子発現を促進することが示唆された。以上より,果実成熟においてDNAメチル化が重要な役割を果たすと考えられた。本事象に関する重要な因子の機能検証のため、以下の3つのアプローチから機能解析技術の確立を目指した。 1形質転換のボトルネックとなる再分化の分子メカニズム解明:RNA-seq解析によりオーキシンシグナリングが品種間差に寄与している可能性を示した。さらにVcESRの過剰発現によりブルーベリーの再分化が促進され、形質転換効率化ツールとしての使用が期待できる。 2ゲノム編集による早期開花系統の作出:花成抑制遺伝子VcCENをノックアウトし早期開花および連続開花を示す系統を獲得した。これにより幼若相が長い果樹においても遺伝子機能解析を迅速かつ通年で実施できる。 3果実における一過性発現系の開発:高発現ベクターつくばシステムを用いて果実における一過性発現系を確立した。ブルーベリーにおけるVcMYBA1の過剰発現により着色が確認され、VcMYBA1がアントシアニン生合成を促進することが示唆された。成熟期のメチル化変動を制御する候補遺伝子について、ゲノム編集および一過性発現による機能解析を試みたが研究実施期間内に結果を得られなかった。
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