研究課題/領域番号 |
21J23100
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中原 崚 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 癒着 / 膝関節 / 超音波 / 物理療法 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
関節内の癒着は外科的手術侵襲等により術後早期から形成され、関節可動域などの運動機能を制限し、日常生活動作に影響を与える。そのため、癒着の予防・治療はリハビリテーション領域において欠かすことのできない研究である。これまでに、ラット膝関節癒着モデルにおいて、低出力超音波パルス療法(以下、超音波照射)による膝関節内癒着形成の抑制効果を明らかにした。しかしその機序は未だ不明なままである。超音波療法は、関節周囲軟部組織の炎症軽減や線維化抑制に効果があることが報告されていることから、本研究では炎症および線維化関連因子に着目し、超音波照射が関節内の癒着を軽減する分子メカニズムについて解明することを目的として遺伝子解析手法を用いた研究を行った。ラットの膝関節癒着モデルを作製し、超音波照射群、擬似照射群に無作為に振り分け、膝前方から膝蓋靱帯へ向けて超音波照射介入を実施した。超音波照射の条件は、強度30 mW/cm2(SATA)、周波数1 MHz、繰り返し周波数1 kHz、時間照射率20%とし、1日20分の照射を術後翌日から開始した。疑似照射群の照射強度は0 mW/cm2とした。評価は固定3日後および7日後とし、膝関節の伸展可動域を測定後にIL6、TNF、TGFb1、COL1A1についてRT-qPCR法を用いた遺伝子解析を行った。その結果、膝関節伸展可動域は超音波照射群が疑似照射群に比べ有意に大きい値を示した。超音波照射群のIL6の発現は3日後に増加し、7日後に減少した。さらに、COL1A1は7日後の疑似照射群で有意に増加したが、超音波照射群では有意な差は認めなかった。また、TNFおよびTGFb1の発現は群間に有意な差は認めなかった。以上は、超音波照射が関節内における術後早期の炎症過程および線維形成に影響していることを示唆する成果であり、関連する国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は関節内の癒着に対する超音波照射の抑制効果のメカニズム解明に取り組んだ。これらの実験は滞りなく遂行されており、得られた成果は国内外の学会で発表し議論を重ねてきた。以上のことから、本研究課題は上記の進捗状況であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
関節内の癒着形成および軽減における分子機構の解明は超音波治療の新たな可能性や、薬物治療をはじめとするその他の治療法の開発につながるため、さらなる取り組みが必要である。超音波照射による癒着軽減には、特に術後早期の炎症や線維形成への影響が関与しているという結果を得ることができたが、その詳細な機序については未だ明らかではない。今後はRNAseqを用いた遺伝子発現解析や免疫組織化学染色等により、さらに詳細な分子メカニズムを解明していく。
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