研究課題
関節内の癒着は外科的手術侵襲等により術後早期から形成され、関節可動域などの運動機能を制限し、日常生活動作に影響を与える。そのため、癒着の予防・治療はリハビリテーション領域において欠かすことのできない研究である。これまでに、関節内癒着の予防・治療リハビリテーションへと臨床応用することを最終目標として、ラット膝関節癒着モデルを作成して研究に取り組み、同モデルにおいて、低出力超音波パルス療法(以下、超音波照射)による膝関節内癒着形成の抑制効果を明らかにした。これらを基盤として、本年度は、この抑制効果が得られる詳細なメカニズムの解明に取り組んだ。具体的には、超音波照射群と疑似照射群のラットの膝関節伸展可動域と、RT-qPCR法を用いた遺伝子解析結果、およびRNAシーケンスを用いた発現変動遺伝子を比較した。その結果、膝関節伸展可動域は超音波照射群が疑似照射群に比べ有意に大きい値を示した。超音波照射群のIL6の発現は3日後に増加し、7日後に減少した。COL1A1は7日後の疑似照射群で有意に増加したが、超音波照射群では有意な差は認めなかった。TNF・TGFb1・HIF1aの発現は群間に有意な差は認めなかった。さらに、3日後および7日後にはそれぞれ113および776個の発現変動遺伝子が明らかとなった。これらのエンリッチメント解析により、関節内における炎症・線維化カスケードに影響することが示された。以上は、超音波照射が関節内における術後早期の炎症過程および線維形成に影響し、癒着軽減に有効である可能性を示唆する成果であり、これを関連する国内外の学会で発表した。なお本研究成果は国際誌に投稿し、現在査読中である。
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PLOS ONE
巻: 18 ページ: e0292000
10.1371/journal.pone.0292000