研究課題/領域番号 |
21J23164
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
特別研究員 |
岡本 耕太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 歩行 / ヒト / フラクタル / コンパスモデル |
研究実績の概要 |
ヒトの歩行は必ずしも定常なものではなく、特徴的なゆらぎを持つ。このゆらぎは歩行リズムに顕著に見られ、フラクタル性を持つ。このフラクタル性は、加齢や疾患によって変化することが知られており、運動機能の健常性を調べる指標(バイオマーカー)となりうる重要な性質である。しかし、なぜヒトの歩行にフラクタル性が見られ、その性質が変化するか、メカニズムは未解明だった。 申請者はこれまでの研究で、中枢パターン生成器と呼ばれる神経制御器と、シンプルなコンパスモデルからなる身体力学系を統合し、神経制御系によって歩行のフラクタル性がどのように変化するかを明らかにしました。特に、位相リセットの有無に応じたフラクタル性の変化を定量的に解析し、その結果から位相リセットにより歩行に見られるフラクタル性が大きく変化することを明らかにした。さらに、このメカニズムが位相応答曲線から説明できることを示唆した。当該年度では、このメカニズムが解剖学的により詳細な筋骨格モデルにおいても再現されるかの検証を行った。 また、申請者はこれまでの研究で、制御なしに傾斜を下る受動歩行において、フラクタルな吸引領域が形成されるメカニズムを明らかにしたが、こちらも依然として解明されていない点がある。そこで、当該年度は、これまで明らかにしてきた吸引領域の形成過程の解析を発展させ、力学系理論に基づいた解析を行い、吸引領域のフラクタル性が急激に変化し、突然消滅するメカニズムを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初提出予定だった論文執筆が遅れており、年度をまたいでしまったため。 これに伴い、論文提出に伴うオープンアクセス費や英文校正費などの予算消化も遅れた。 最終的には論文執筆し、アクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発された、解剖学的に詳細な7リンク18筋からなる筋骨格モデルに、中枢パターン生成器と位相リセットが導入された神経筋骨格モデルを用いて動力学シミュレーションを行っている最中であり、これを進める。具体的には、歩行リズムのゆらぎを調べ、吸引領域に見られるフラクタル性との関係を明らかにすることで、ヒトの歩行に見られるフラクタル性を明らかにする。特に、位相応答の特性からゆらぎの標準偏差の大きさが変化することが予想されており、これを定量的に調査しフラクタル性変化のメカニズムを考察する。
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