研究課題/領域番号 |
21J23196
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 和輝 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 畏敬 / 自己超越 / 自己認知 / 人生の意味 / 人生満足感 |
研究実績の概要 |
大自然の絶景のように,広大かつ既存の枠組みで捉えることが困難な刺激に対して生じる感情反応は「畏敬」と呼ばれており,近年心理学を中心に注目を集める重要な研究テーマの一つである.本年度は,畏敬が自己認知に及ぼす影響を検討するため,オンライン実験を実施した.実験では,畏敬動画(氷河や森林を空撮した動画)や中性動画(企業の紹介動画)を視聴した後に自己認知や幸福感に関わる質問項目に回答することが求められた.その結果,中性動画を視聴した参加者と比較して,畏敬動画を視聴した参加者の方が,「本来の自分のあり方とむすびついている」と感じたり,「周囲のあらゆる人やモノと心理的につながっている」と感じると報告することが明らかになった.また,畏敬を喚起された際の「つながり」感覚が,自身の人生に意味があると感じる程度や人生に満足している程度と正に関連することが示された.これらの結果は,日本人の畏敬経験における自己認知の変容や幸福感の向上等のポジティブな効用の理解に寄与すると考えられる.さらに,本実験では,畏敬経験後の心理状態を測定する質問紙であるSituational Awe Scaleの日本語版を作成し,十分な信頼性と妥当性を確認した.信頼性と妥当性のある日本語の畏敬尺度を作成した本研究は,今後の畏敬研究に方法論的貢献も期待される.これらの研究成果をまとめた論文がCurrent Psychology誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,畏敬経験における自己認知の変容について知見を深めることができた.また,一連の研究成果を論文にまとめ,原著論文としてCurrent Psychology誌に投稿し,受理された.
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今後の研究の推進方策 |
実験場面における畏敬経験だけでなく,日常生活における畏敬経験が自己認知に及ぼす影響および心理メカニズムについて,中長期的に縦断データを測定することにより検討する.
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