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2021 年度 実績報告書

環境曝露試験と簡易数値解析に基づく自然由来汚染土壌の長期評価システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 21J23208
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

唐 佳潔  京都大学, 地球環境学舎, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワード溶出挙動 / トンネル掘削岩石 / 環境曝露条件
研究実績の概要

この研究では、処分用地が限られる日本では、建設工事に伴い大量に発生する自然由来汚染土壌・岩石(人為汚染ではなく、地質起源の重金属が基準値を超える土壌)を廃棄物ではなく、地盤材料として再資源化することを目指し、そして利用現場ごとに土壌・岩石が曝露される環境を考慮した上で、環境安全性(特に重金属の溶出特性)をより適切かつ迅速に評価する方法を開発している。
本研究は溶出試験と数値解析の二つの部分で構成され、初年度は溶出試験のうち、環境曝露試験を行った。これまで日本の公定バッチ溶出試験法は単一な試験条件で簡便である反面、曝露環境での経時変化は評価できない。地盤材料の溶出挙動は実際の現場に即して評価される必要がある。本研究ではより実現場の曝露環境(乾湿繰り返し、酸化還元変化など)を考慮するため、乾湿繰り返しのサイクル数を変数として、溶出実験の液固比(溶媒体積/土壌重量)や接触時間も変化させて溶出濃度の経時変化を評価できる液固比バッチ試験と上向流カラム試験を行った。
具体的には、2種類のトンネル発掘岩を使用し、複数の乾湿条件による乾湿処理が終わった材料を溶出実験に使った。その後、溶出液中化学元素の濃度を測定し、重金属の溶出特性評価を行った。さらに、岩石の化学的および鉱物組成は、X線回折(XRD)、蛍光X線(XRF)、および酸分解によって分析を行った。岩石粒子の形態は、エネルギー分散型分光法(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して観察および分析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の目的は,環境曝露を考慮した重金属溶出挙動の解明と,曝露影響を変数として組み込むことによる数値解析手法の確立である。前者の重金属溶出挙動の解明では,複数の溶出実験データを軸に研究を遂行した。
実験に関しては,当初はpHや酸化還元状態など他の環境曝露条件も数パターンに変える予定だったが,バッチ試験と上向流カラム試験では乾湿条件だけに留まった。酸化還元状態を変更した実験は大型カラムを使用し、酸素センサーで酸化還元状態の変化を計測している。そして岩石への化学的および鉱物組成分析も行い、十分な実験データを蓄積したと考える。様々な実験から環境曝露条件によっての溶出挙動の差異等を確認でき,目的は概ね達成できたと考える。
二年目は数値計算手法の開発を目的に行い、一年目に得られた溶出実験データを用いて、その結果を入力条件とした数値解析手法を開発する。そして並行して実施するカラム溶出試験における濃度の経時変化を液固比バッチ試験から得たデータから予測可能かを検証し、その精度と適用限界を明らかにする。特に、pHや酸化還元電位、温度等の現場曝露環境要因が重金属の化学形態に及ぼす影響の定量化を文献データを基に目指す。物理・化学平衡計算を行うことで最終目的は達成できると考える。
以上が現在までの進捗状況であり,計画の成果が得られたと判断できる。

今後の研究の推進方策

二年目は数値計算手法の開発を目的に行い、一年目に得られた溶出実験データを用いて、その結果を入力条件とした数値解析手法を開発する。そして並行して実施するカラム溶出試験にお ける濃度の経時変化が液固比バッチ試験から得たデータの予測計算可能かを検証し、その精度と適用限界を明らかにする。特に、pHや酸化還元電位、温度等の現場曝露環境要因が重金属の 化学形態に及ぼす影響を、文献データを基に定量的に把握できる関数にする。 数値解析手法の精度を数学的に証明するため、文献調査に加えて物理・化学平衡計算に関するソフト(MATLAB、GWB等)を使用し、Excel等の表計算ソフトで容易に実施可能な計算ツールを開発する。作成した計算ツールを用いて、溶出挙動に関する既存データを入力した場合の妥当 性を検証する。また、試験に供した土壌の微視構造観察やX線分析を行うことで、溶出試験前 後での化学形態の変化を可視化して評価する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Determining Adsorption Parameters of Potentially Contaminant-Releasing Materials Using Batch Tests with Differing Liquid-Solid Ratios2021

    • 著者名/発表者名
      Sakanakura Hirofumi、Ito Kenichi、Tang Jiajie、Nakagawa Mikako、Ishimori Hiroyuki
    • 雑誌名

      Materials

      巻: 14 ページ: 2534~2534

    • DOI

      10.3390/ma14102534

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 液固比バッチ試験によるヒ素の吸脱着反応の評価2021

    • 著者名/発表者名
      奈佐原寅太郎,唐 佳潔,加藤智大,高井敦史,勝見 武,肴倉宏史
    • 学会等名
      第56回地盤工学研究発表会
  • [学会発表] 液固比バッチ試験による脱着反応に着目したヒ素の溶出特性評価2021

    • 著者名/発表者名
      奈佐原寅太郎,唐 佳潔,加藤智大,Gathuka, L.W.,高井敦史,勝見 武
    • 学会等名
      土木学会関西支部年次学術講演会
  • [学会発表] Effect of Rainfall Pattern on Chemical Leaching from Excavated Dolerite2021

    • 著者名/発表者名
      Yingzhou Shao, Jiajie Tang, Lincoln W. Gathuka, Tomohiro Kato , Atsushi Takai and Takeshi Katsum
    • 学会等名
      Kyoto University International ONLINE Symposium 2021 on Education and Research in Global Environmental Studies in Asia: Restarting International Cooperation After Covid-19 Pandemic
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28   更新日: 2023-08-01  

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