研究課題/領域番号 |
21J23216
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
義村 弘仁 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ネコ科動物 / 食性 / メタバーコーディング / DNA |
研究実績の概要 |
2021年度は、採取済みであったキルギス共和国の野生ユキヒョウの糞38サンプルを用いて、DNAメタバーコーディングを実施した。その結果、野生ユキヒョウの糞中に含まれていた植物は、イネ科、Myricaria属、キク科の3分類群が大半であることがわかった。肉食動物の食性解析においては、餌動物の消化管内容物の影響を考慮する必要がある。餌動物と同じサンプルから検出される確率が有意に高い植物分類群は、二次摂取の可能性が高いと考えられた。しかし、二次摂取の恐れがある分類群を除いても、植物分類群の内訳に大きな変化はなかった。また、Myricaria属に関しては、中国の有蹄類に好まれないことが知られているため、餌動物の胃内容物の影響は低いと考えられた。これらの分類群は薬効成分を含む種が多く、人々の伝統薬としても利用されている。このことから、ユキヒョウは寄生虫や病原体に対抗するために植物を摂取している可能性が示唆された。これらの結果に関しては、国際学会で2件の発表を行った。今後、延期していた現地調査を実施しサンプル数を増やすことで、より精度の高い議論が可能になると考える。 また、現生の野生ネコ科動物を対象に文献データを用いた種間比較を実施し、小型の種ほど食性調査において植物が検出される頻度が高いことがわかった。これは、基礎代謝率が高い小型の種ほど、植物摂取による寄生虫除去などの栄養獲得効率向上の恩恵が大きい可能性が考えられる。加えて、他のヒョウ属に比べてユキヒョウは植物の検出頻度が高いことも明らかになった。これらの結果は、日本哺乳類学会で発表するとともに、筆頭著者として国際誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによる渡航規制の影響で、予定していた現地でのフィールドワークを延期せざるを得なかった。しかし、すでに採取済みのサンプルを用いて解析を実施し、野生ユキヒョウ糞中に含まれる餌動物、植物の分類群を明らかにすることに成功した。また、統計解析手法に関しても確立できた。これらを踏まえて、研究計画通りに進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、2021年度に調査地であるキルギス共和国に渡航し、現地調査を行う予定であった。しかし、コロナウィルスの影響で渡航計画のを変更せざるを得なかった。2022年度には、現地調査を実施しサンプルを採取する予定であるが、サンプル数が当初の計画より減少することも予想される。その場合には、当初の予定よりも対象種を限定し、大型の哺乳類を中心とした解析を行う必要があると考えられる。
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