1. 高校の探究学習を通じた高大接続に関する実証的検討――マス型の大学で学ぶ学生にとって,高校での探究学習の経験が大学での学びにどのようにつながるのかについてインタビュー調査を通じて明らかにした。その結果,正課教育における教育内容・教育方法の側面から接続が検討されてきた従来の高大接続から,部活動や日常生活など,正課外の側面を含めた高大接続へと議論を拡張する必要性を提起した。また,「難関大学」「大学附属高校」「ボーダーフリー大学」を対象とした質的・量的な検討によって,高大接続のセグメント化の実態を浮き彫りにした。
2. 高校の探究学習の事例に関する実践的検討――これまでの先進的な実践を批判的に捉え直し,探究学習の多様性を描き出すとともに,中等教育における探究学習の固有性を浮き彫りした。特に,私は共同研究者とともに,広尾学園中学校高等学校 医進・サイエンスコースにおける「研究活動」を軸とした探究のカリキュラムの様相を紹介した。また,SSH・SGH 指定校における研究開発について計量テキスト分析を実施し,研究開発の中核である探究学習のカリキュラム編成の意図についての分析を通じて探究学習を研究する際の視点を提示した。
3. 高大接続における移行概念についての実証的・理論的検討――従来の「高等教育への移行」とそれに代わる「生成(becoming)」の対比をふまえ,日本人学生が経験した「高等教育への移行」の経験を明らかにすることによって,高等教育への移行の考え方を再構成する手がかりを得た。また,国内で用いられている高大接続と,欧米で用いられている高等教育への移行という概念を踏まえて,両者をどのように統合して再構成することができるかという問題意識をもとに,今後の研究構想についてを発表した。
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