研究課題/領域番号 |
21J23273
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 考岐 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ナノ構造 / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、軽量かつフレキシブルな太陽電池への応用が期待されているペロブスカイト太陽電池で発電効率と寿命を低下させる半導体結晶中の欠陥とイオンの拡散を結晶方位の制御により改善することである。結晶構造の制御は1次元ナノ構造体を配列させることによって行うが、本年度はまず、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層にあたる金属酸化物半導体の1次元ナノ構造体を作製した。金属酸化物半導体には酸化チタンを用い、1次元ナノ構造であるナノロッドアレイ形状のものが得られた。その後さらに、ペロブスカイト太陽電池では電子輸送層のキャリア輸送特性及びペロブスカイト層との接合を改善することが発電効率を改善する有効的な手段であることから、酸化チタンへの他元素ドーピングと、ペロブスカイト層と構造的親和性の高い化合物によるヘテロ接合化を行った。その際に2種類の結晶構造の酸化チタンで合成条件とナノロッド形状を比較した。これまでに作製してきた結晶構造では他元素ドーピングによりナノ構造体の形状が変化し、一定以上のドープ率では1次元ナノ構造を維持することが難しかったのに対して、今回作製した化学的安定性が比較的低い結晶構造では、ナノ構造の形態に大きな変化が見られないことがわかった。また、ヘテロ接合化についても、フレキシブル太陽電池への応用により適した、より温和な条件で可能となった。作製したナノ構造体のキャリア輸送特性はナノ構造体の配列方向に沿った測定の実施を進めているところである。 以上の通り、本年度は当初の計画である金属酸化物半導体の1次元ナノ構造の作製を行った上で、ドーピングとヘテロ接合化についても研究を進めた。本年度の成果は国内学会2件、国際学会2件で発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度は金属酸化物と金属ハライドペロブスカイトの1次元ナノロッドを作製する予定であった。金属酸化物の1次元ナノロッドの作製には成功し、さらに機能性を高めるための他元素のドーピング、ヘテロ接合化、結晶構造の比較と研究を進展させることができた。一方で、金属ハライドペロブスカイトについては、研究の実施途中であり、具体的な実績は得られていない。以上のように、2つの目標のうち一方では当初の計画以上の進捗があり、他方では計画通りの進捗が得られなかったが、2つを総合すると本年度は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、本年度に達成することのできなかった金属ハライドペロブスカイトの1次元ナノロッドの作製を行う。具体的には、CsPbBr3のナノ結晶をあらかじめ作製した酸化チタンの1次元ナノ構造体の存在化で合成することによりナノロッド構造を得る。その後は、Convective deposition法によってナノ構造体を配列させた2次元配列フィルムの作製についての研究を行う。Convective deposition法はメニスカスと溶媒の揮発を利用して基板上に薄膜を作製する手法であるため、条件設定については、成膜スピード、溶液濃度、溶媒の種類を統計的に変化させて行う。作製したフィルムは走査型プローブ顕微鏡、X線回折法によって観察し、一般的なスピンコート法で作製したものと比較する。最終的には、本研究の研究計画に従い、1次元ナノロッドとConvective deposition法による配列技術を組み合わせて、配列を制御したペロブスカイト太陽電池作製する。
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