2種類の結晶構造の1次元ナノ構造体酸化チタンを透明導電性基板上に作製し、キャリア輸送特性の向上を目的とした他元素ドーピングを行った結果、一方の結晶構造では他元素ドーピングによりナノ構造体の形状が変化して一定以上のドープ率で1次元ナノ構造を維持することが難しいのに対して、もう一方の化学的安定性が比較的低い結晶構造ではナノ構造の形態に大きな変化が見られずより高いドーピング率を達成できることを確認した。次に、基板上の1次元ナノサイズ空間に金属ハライドペロブスカイト量子ドットをメニスカスを利用した方法で並べることを試みた。その結果、ナノサイズ空間外に並んだ量子ドットと比較して、ナノサイズ空間内に並んだ量子ドットでは著しい発光強度の増加が確認された。また、別の1次元ナノ構造をもつ酸化チタン内部の1次元ナノサイズ空間内に金属ハライドペロブスカイト結晶を合成し、1次元ナノ構造をもつペロブスカイト結晶を作製したところ、得られた酸化チタン/ペロブスカイト結晶の複合材料では、1次元ナノ構造同士の接触がペロブスカイト結晶で生成された光励起キャリアをより効率的に酸化チタンへ移動することが確認された。 近年、軽量でフレキシブルな太陽電池としてペロブスカイト太陽電池が注目されている。ペロブスカイト結晶構造をもつ光吸収層と電子輸送層として働く金属酸化物半導体層の内部及び界面でのエネルギー損失や劣化は、太陽電池の性能を低下させる要因となる。本研究では、1次元ナノ構造を導入することで、キャリア移動やエネルギー移動の効率化に対して一定の成果が得られた。
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