本研究は、日本における移民的背景のある子ども(両親のうち最低限いずれかが外国出生の子どものことを指す)の学力の実態把握、および、いかにして学力が形成されるのかを明らかにすることを目的にしていた。 本研究を通じて、以下のことを明らかにすることができた。第一に、移民的背景のある子どもが低学力に陥りやすいとされるものの、その内部では日本人との間の学力格差の実態に差異が生じていた。具体的には、移民的背景のある子ども自身が日本出生の場合には、日本人の子どもとの間には学力格差がほとんどない。また、親の出生地の組み合わせ(父のみ外国出生、母のみ外国出生、両親外国出生)の間でも学力に差が生じており、ひとまとめに「移民的背景のある子ども」とすることの限界を指摘できた。 第二に、就学時の認知的能力(算数力や日本語のリテラシー)の低さが、移民的背景のある子どものその後の学力の低さに結びついていることを明らかにした。特に、日本語のリテラシーの低さが、移民的背景の有無による学力格差の多くを説明していることから、就学前における言語的な環境の実態把握や支援の必要性が指摘できた。また、移民的背景のある子どもは、就学時の認知的能力の低さに伴う、その後の学力水準の低さが、日本人の子どもよりもさらに低くなりやすいことも明らかにした。 第三に、学習時間と学力との間の関係性を検討した結果、移民的背景のある子どもについては、必ずしも、学習時間が長いことが高い学力と関連しているわけではないことを明らかにした。サンプルサイズの限界もあり、一般化することは難しいが、移民的背景のある子どもについては、彼らをとりまく環境(学校や家庭)、あるいは、彼らが実際にどのように学習に取り組んでいるのかという実践的な部分に着目する必要性が指摘できる。
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