研究課題/領域番号 |
21J23500
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武島 愛夏 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | アミン触媒 / カルボニル化合物 / 不斉アルキル化反応 |
研究実績の概要 |
光学活性なアミン触媒とカルボニル化合物から生じるエナミン中間体は、多様な求電子剤と立体選択的に反応するため、カルボニル基のα位の修飾に盛んに利用されている。しかし未だにα-不斉アルキル化は困難な課題である。これは触媒のアミン部位がアルキル化剤と反応し、失活するためである。このため、適用できるアルキル化剤は大きく制限されていた。そこで申請者は、アミン部位の反応性を保ったままアルキル化剤との反応を抑制すべく、カルボカチオンをアルキル化剤としてアミン部位の遠隔位で系中発生させ、エナミンで即座に補足するという手法での解決を着想した。本研究では、申請者が以前開発したフェニルシクロプロパン型二級アミン触媒は分子内の二か所の活性部位を遠隔位に固定できるという特徴に着目し、高い求電子性のカルボカチオンと求核性を持つアミン触媒が共存する触媒系の確立を目指している。なお、今年度はフェニルシクロプロパン型二級アミン触媒に関する総説をSynlett 誌に報告した。 今年度の研究の結果、想定していた手法でのアルキル化反応に関して有効な結果を見出すことはできなかった。そこで、新たな反応機構でのカルボニル化合物の不斉アルキル化反応の開発に着手した。 検討の結果、当該研究員が以前報告した、新規臭素化剤と二級アミン触媒によるアルデヒドの不斉臭素化反応を利用することで、これまで報告例のない反応機構を経由してアルキル化反応が進行することを確認した。また、予備的な結果ではあるが、不斉アルキル化反応以外の変換反応に当該の反応機構を応用できることを見出した。来年度は、新規不斉アルキル化反応の適用範囲を調査するとともに、不斉アルキル化反応に留まらず、新規変換反応への展開を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究の結果、想定していた手法でのアルキル化反応に関して有効な結果を見出すことはできなかったため。そこで、新たな反応機構でのカルボニル化合物の不斉アルキル化反応を構想し、開発に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、以前に新規臭素化剤と二級アミン触媒によるアルデヒドの不斉臭素化反応を報告している。二級アミン触媒存在下、新規臭素化剤とアルデヒドが反応することでアルデヒドのα位不斉臭素化反応が進行する。この反応系中でエノラートを発生させることができれば、分子間反応及び分子内反応を経て、α位がアルキル化されたアルデヒドが得られると考えられる。検討の結果、良好な収率で所望の生成物を得られる反応条件を既に見出している。今年度は前年度に新たに見出した上記の反応について反応機構の詳細を調査する。試薬の当量を変化させることで反応中間体を生じさせ、単離を試みる。想定される複数の反応中間体の発生の確認を行う。その後、この反応の基質適用範囲の調査と、生成物のさらなる変換を行う。特に、この反応で得られる生成物は生理活性物質や天然物に含まれる部分構造への変換が可能であると考えられるため、形式的全合成の達成を目指す。 さらに、想定される反応中間体に対し、脱水剤として機能する試薬を作用させると想定外の生成物を与えることを既に見出している。この予備的データをもとに、脱水剤として同様の役割を果たすと考えられる試薬に関して検討を行う。来年度は、新規不斉アルキル化反応の適用範囲を調査するとともに、不斉アルキル化反応に留まらず、新規変換反応への展開を目指す。
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