研究実績の概要 |
本研究ではアジア人骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)や関連疾患で高頻度に認められる染色体1番と7番の間で起こる不均衡転座der(1;7)(q10;p10)(以下der(1;7))陽性症例に着目した。この派生性染色体の臨床的特徴と遺伝学的特徴を見出すため、類似するコピー数変化を有するMDSと関連疾患患者を用いて比較解析を行った。der(1;7)陽性症例は7番長腕が欠失しており、1番長腕が増幅しているコピー数変化が起こるため、7番長腕が欠失している376の-7/del(7q)と1番長腕が増幅している54の+1q症例とその他の症例、2,808症例を収集した。der(1;7)陽性症例は148症例と過去最大コホートとなり、次世代シーケンサーを用いてゲノム解析を行った。臨床的特徴では、der(1;7)陽性症例は-7/del(7q)陽性症例より予後良好であり、+1q陽性症例より予後不良であることが明らかになった。 非腫瘍の検体があるder(1;7)症例では、whole-exome sequencingを行った結果、RUNX1, ETNK1, やEZH2の変異が高頻度で認められた。MDSでは新規報告となる、転写因子のMYB でも変異が認められた。全症例でターゲットキャプチャーシークエンスを行ったところ、der(1;7)陽性症例の遺伝子変異のプロファイルは-7/del(7q)や+1q陽性症例とは異なることが明らかになった。RNA-sequencingを用いた発現解析では、1番長腕上にあるMDM4 というTP53 を抑制する遺伝子が高発現しており、TP53 のパスウェイはdown-regulateされていた。MDM4をターゲットとした治療法の開発も期待され、今後の研究で検討していく。 以上の研究成果を国内外の学会で発表を行い、論文にまとめた。
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