研究課題/領域番号 |
21J40018
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國富 晴子 京都大学, 京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 高島研究室, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 着床期モデル / 霊長類の着床期胚発生 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒト及び非ヒト霊長類であるカニクイザルの着床現象及び着床後胚発生,子宮内膜の変化を試験管内で再現し,霊長類の着床機構,脱落膜化機構,着床後胚発生の分子メカニズム解明に寄与することである. 着床現象は胚の子宮内膜への対位,接着,浸潤からなる三次元的な現象であり,この現象を試験管内で再現するためには200μm以上の厚みのある三次元子宮内膜モデルの構築が必要である.上記目標を達成するため,令和3年度は胚の着床現象を試験管内で再現するための土台となるヒト及びカニクイザル三次元子宮内膜モデルを構築することを目標とした. まず,同意の得られた良性疾患のため子宮摘出術を受ける複数の症例及びカニクイザルから子宮内膜組織を採取し,子宮内膜上皮オルガノイド,子宮内膜間質細胞を樹立し,それぞれ性ホルモン刺激による脱落膜化様変化を確認した.次に,マイクロウェルプレートで子宮内膜間質細胞と血管内皮細胞を共培養し,三次元的な間質細胞組織の内部に血管網を形成する条件を最適化した.さらに,ネットモールド技術(Yang B et al, Tissue Eng Part C Method 2019)を応用して間質組織と上皮細胞を共培養し,安定的に200μm以上の厚みを有する試験管内子宮内膜モデルを構築することに成功した.本モデルでは上皮細胞が生理的な形態及び性ホルモン刺激(エストロゲン,プロゲステロン)への応答性を保っており,今後は遺伝子及びタンパク発現解析を進めて受容期子宮内膜モデルとしての妥当性を検証するとともに,人工ヒト胚モデル及びカニクイザル胚との共培養による着床期モデルの構築を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初,試験管内での三次元子宮内膜モデル構築にゼラチンナノファイバー技術(Li J et al, Stem Cell Rep 2017)を用いる予定であったが,間質細胞層に上皮細胞を生着させることが困難であり,難航した.しかし,ネットモールド技術に着目することでこの問題を克服することができ,全体としてはおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに構築した試験管内三次元子宮内膜モデルとヒトナイーブ型多能性幹細胞由来の人工ヒト胚モデル(ブラストイド)または野生型カニクイザル胚を共培養し,着床期モデルを構築する予定である. 現時点では子宮内膜モデルとヒト胚モデル及びカニクイザル胚の培養条件が異なっているため,まずは両者を共培養し,着床現象を生体内に類似する形で進行させるための最適条件を検討する.最適条件の確定後,着床前後の各時期おける組織学的検索,シングルセルRNAシーケンスを行い,既報のカニクイザルの生体内所見と比較検討することで本着床期モデルの妥当性を検証する. 生体内の着床期胚発生過程を試験管内で再現する本着床期モデルを用い,胚発生の過程における各々の細胞群に特異的な新規マーカーの同定,新たな遺伝子発現プロファイルを持つ細胞集団の発見を目指す.さらに,ヒト及びカニクイザル双方について,着床前及び着床後の各タイムポイントにおける培養上清の分泌タンパク及びエクソソーム解析を検討している.
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