研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒト及び非ヒト霊長類であるカニクイザルの着床現象及び着床後胚発生,子宮内膜の変化を試験管内で再現し,霊長類の着床機構,脱落膜化機構,着床後胚発生の分子メカニズム解明に寄与することである. 本年度は,昨年度までに構築した子宮内膜間質層及び上皮細胞による三次元子宮内膜モデルを用い,着床期モデルを構築することを目標とした.最近,マイクロウェルプレート内で着床前エピブラストに相当するナイーブ型ヒト多能性幹細胞(Takashima Y et al., Cell, 2014)からなる胚様体を形成させ,適切な増殖因子の存在下で培養することで胚盤胞に類似した性質を持つブラストイドが得られることが報告された(Kagawa H et al., Nature, 2022).このブラストイドを人工ヒト胚モデルとして使用するため,まず野生型ヒト多能性幹細胞を従来の着床後エピブラストに相当するプライムド型からナイーブ型へとリセットし,ブラストイド形成を最適化するために細胞数,培養液,培養期間の条件検討を行った.続いて,三次元子宮内膜モデルとブラストイドの共培養実験を行った.三次元子宮内膜モデル形成後に性ホルモン刺激を行い,ブラストイドと共培養することで栄養膜細胞に相当するブラストイド最外層が子宮内膜細胞に接着することが確認できた.免疫染色にてGATA3陽性の栄養膜細胞が子宮内膜細胞に接しており,ブラストイド内部にOCT3/4陽性の胚盤葉上層及びGATA6陽性の胚盤様下層が保たれていた.胚モデルと子宮内膜モデルの接着現象は認めたものの,本来その後に続く胚の子宮内膜間質層への浸潤は共培養期間を延長しても確認できておらず,共培養開始前の人工胚モデルの培養条件,共培養時の培養液組成などの条件検討が今後必要であると考えられた.
|