研究課題/領域番号 |
21J40104
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
キース 由貴 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 肥満細胞 / 肥満細胞前駆細胞 |
研究実績の概要 |
1.皮膚常在肥満細胞および誘導性肥満細胞のアトピー性皮膚炎における機能解析 まず皮膚常在肥満細胞のアトピー性皮膚炎における機能を解析するためにMasTRECKマウス(ジフテリアトキシン(DT)全身投与により好塩基球と肥満細胞が除去されるマウス)において、耳介にのみ低用量のDTを真皮内局所投与を行い、耳介の皮膚常在性肥満細胞のみが除去されることを確認した。このマウスをつかって、MC903塗布を行い、耳介の炎症を解析したところ、皮膚常在肥満細胞が除去されたマウスでは耳介の炎症が抑制される傾向にあることが分かった。次に、骨髄由来誘導性肥満細胞の機能を解析するために、WTマウスにWsh/Wshマウス(全身の肥満細胞が欠如しているマウス)の骨髄を移植した骨髄キメラマウス(Wsh/Wsh>WT)を作成し、骨髄由来誘導性肥満細胞のみが欠如していることを確認した。このマウスをつかって、アトピー性皮膚炎を誘導したところ、耳介の炎症には変化を認めなかった。以上より、MC903誘導性ADモデルにおいて、皮膚常在肥満細胞は炎症惹起作用を担っている可能性がある一方、骨髄由来誘導性肥満細胞は明らかな機能を示さないと考えられた。 3.誘導性肥満細胞の皮膚での分化 CD45.1骨髄キメラマウスを用いて、皮膚浸潤後の骨髄由来誘導性肥満細胞の増殖および分化を検討した。誘導性肥満細胞はMC903塗布開始14日から21日目にかけてアトピー性皮膚炎に浸潤していた。浸潤した誘導性肥満細胞は肥満細胞前駆細胞のマーカーであるintegrinβ7の発現が徐々に低下し、その一方でCD200R3、Heparinといった結合織型肥満細胞のマーカーが増加していた。また、誘導性肥満細胞は28日目から35日目にかけて増加していた。これらの結果より、誘導性肥満細胞は皮膚浸潤後、局所で増殖し、結合織型肥満細胞へ分化していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験は実行できており、またこれまでの結果を論文発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄由来誘導性肥満細胞が皮膚へ浸潤するメカニズムについてさらに解析を行う。 1.CD9-IL16によるメカニズム 前年度のRNAseqを用いた実験結果より骨髄由来肥満細胞がCD9を特異的に発現していることがわかっている。CD9のリガンドとなるIL-16がアトピー性皮膚炎の皮膚で上昇しているかを確認する。そしてCD9KOマウスを使って、in vitro, in vivoで肥満細胞の皮膚浸潤が変化するかを確認する。 2.Tregの関与 これまでの既報よりCD25陽性CD4T細胞が肥満細胞前駆細胞の末梢臓器への浸潤へ関与していることが示唆されている。制御性T細胞を後天的に除去可能なFoxp3DTRマウスを用いて、アトピー性皮膚炎を誘導し、肥満細胞前駆細胞の浸潤がどのように変化するかを確認する。
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