研究課題
ヒトは日頃、勉学・仕事・スポーツなどの様々なアクテビティにおいて、現状よりも高い目標を設定する。自分の行動に思ったような結果が伴わなかった期待外れの場合でも、すぐに諦めるのではなく、むしろこれを乗り越えようとすることで将来の成功につなげる。しかし、このような動機づけを支える神経メカニズムは明らかになっていない。本研究は、期待外れを乗り越える動機づけをげっ歯類ラットを対象に検討する行動課題を用いて、この課題を行なっている最中の神経活動を計測・操作することで、脳複数領域間の役割を検討することを目的としている。本年度は、期待外れを乗り越える動機づけの強さが状況により変動する行動課題を行なっている最中のラットに対して、側坐核におけるD1細胞の1細胞レベルでのカルシウムイメージングを行った。具体的には、頭部固定下のラットがレバーを操作した後に音刺激が提示され、このレバー操作を3回繰り返した後、4回目のレバー操作の後に報酬を得る行動課題であった。レバー操作回数が増えるにしたがって、レバー操作の際により強度な期待外れの動機づけが発揮されることが予想される。実験の結果、これまでよく知られている報酬予測と一致した活動を示す細胞だけでなく、期待外れを乗り越える動機づけと一致した活動を示す細胞が認められた。この結果は、側坐核のD1細胞が報酬予測に関連した情報と期待外れを乗り越える動機づけに関連した情報を、並列して処理していることを示している。
2: おおむね順調に進展している
期待外れを乗り越える動機づけを検討可能な行動課題を開発することができた。また、側坐核D1細胞の神経活動計測法の技術を習得し、予備的なデータを得ることができた。以上から、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
側坐核D1細胞の1細胞レベルでのカルシウムイメージングの実験を継続して行い、データの追加収集と追加解析を行う。
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Science Advances
巻: 9 ページ: 1-19
10.1126/sciadv.ade5420