研究課題
ヒトは、勉学・仕事・スポーツなどのアクテビティーにおいて、現状よりも高い目標を定める。自分の行動に思ったような結果が伴わなかった期待外れの場合でも、すぐに諦めるのではなく、むしろこれを乗り越えようとすることで将来の成功につなげる。しかし、この動機づけを担う神経メカニズムは不明である。本研究は、側坐核D1受容体陽性細胞の役割を予備的に検討した。D1受容体陽性細胞にGCaMP8を発現し、その直上にレンズを埋め込んだ。頭部固定下のラットがレバーを前側に押すと音刺激が提示され、その後レバーを口元に引いた。この一連のレバー操作を一定回数繰り返した後に報酬を得ることができた。行動を解析したところ、報酬獲得に近づくレバー操作ほど、試行開始からレバー操作を開始するまでの時間が短かった。また、報酬獲得から遠いレバー操作ほど、レバーを相対的に前側に押していた。D1受容体陽性細胞の神経活動を解析したところ、報酬提示に対して正の反応を示す細胞(タイプ1)と、負の反応を示す細胞(タイプ2)が見つかった。また、タイプ1細胞はレバー操作が報酬に近づくほど活動が高なった一方、タイプ2細胞は活動が低くなった。また、レバーを口元に引いた直後の神経活動と同じ時点でのレバーの位置の関係性を解析したところ、タイプ1細胞では活動が低いほどレバーは前側に位置していたが、タイプ2細胞では活動が高いほどレバーは前側に位置していた。今後さらにデータの取得を重ねる必要があるものの、以上の予備データから、側坐核D1受容体陽性細胞の中には、報酬期待に対応した活動を示す細胞群と、期待外れを乗り越える動機づけに対応した活動を示す細胞群が存在しており、後者の細胞群は未来の報酬を得るために行動を切り替えることに関わる可能性があることが示唆される。
すべて 2023
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Science Advances
巻: 9 ページ: 1-19
10.1126/sciadv.ade5420