研究課題/領域番号 |
22J01543
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 健史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | デコーディング / 皮質脳波 / 次元削減 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である,柔軟な意思決定とそれに基づく予測性眼球運動制御の脳内メカニズムの解明に向け,本年度では複数の意思決定パラメータを持つターゲットの脳内表現に焦点を当てた実験および解析手法の構築に取り組んだ。具体的には,さまざまな報酬確率と期待値との組み合わせから成るターゲットを用いた報酬依存的意思決定課題をマカクサルに行わせ,外側前頭領域に留置したECoG電極から課題中の皮質脳波電位を記録した。ターゲットの呈示から意思決定までの期間において,特にアルファ帯域未満(<13Hz)の周波数帯で顕著な活動が観察され,この活動は報酬確率と期待値の両方に関連した変調を示した。続いて,神経集団活動から特定のパラメータに関連する次元を抽出する次元削減アプローチであるdemixed principal component analysisをECoGデータに適用することで,前頭領域の神経振動のダイナミクスが個々の意思決定パラメータをどのように表現しているかを解読することを試みた。その結果,前頭領域の神経集団活動を報酬確率と期待値に関連する少数の成分に分解することに成功した。また,各意思決定パラメータに関する軸を線形分類器として構築したデコーダは,呈示されたターゲットが持つ個々のパラメータを十分な精度で分類することができた。以上の結果より,1つのターゲットに含まれる複数の意思決定パラメータが,外側前頭領域の低次元神経振動中で表現されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度は,眼球運動および空間認知課題の設計およびサルの訓練に時間を要することが予想されたが,それと並行して本研究課題と関連した意思決定実験を進めることで,神経活動の解析手法を確立することができた。さまざまなパラメータに対して感度を持つことが知られている前頭領域から関心のある情報を解読する手法を確立することは,本研究の目的を達成するために解決すべき課題の1つであった。初年度終了時点でこの課題を達成できたことから,進捗は順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,今年度明らかにした外側前頭領域のリスク指向性表現が報酬依存的意思決定に特有であるのか,あるいは柔軟な運動制御戦略に係る意思決定においても認められるのかを検証する必要がある。加えて,同手法を用いた解析によって,運動制御に関する認知過程と運動そのものに関連する神経活動を抽出可能かを検証する必要がある。引き続きサルの訓練を進めつつ,解析手法の構築を進めていく。
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