研究課題/領域番号 |
22KJ1787
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 健史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 経済的意思決定 / 報酬 / リスク / リターン / 光遺伝学 / 神経デコーダ / マカクサル |
研究実績の概要 |
本研究の目的である,柔軟な意思決定に係る脳内メカニズムの解明に向け,前年度に引き続き,複数の意思決定パラメータを持つターゲットの脳内表現の解明とそれらを用いた意思決定の解読に取り組んだ.具体的には,さまざまな報酬確率と期待値との組み合わせから成るターゲットを用いた報酬依存的意思決定課題中のマカクサルの外側前頭領域に皮質脳波電極を留置し,記録した脳活動データからサルの意思決定のデコーディングを試みた.加えて,上記の報酬依存的意思決定を支える神経回路を特定するため,光遺伝学手法を用いて腹側被蓋野-前頭皮質回路を選択的に活性化し,観察されたサルの意思決定における嗜好性が外側前頭領域の脳波活動から解読可能かを検証した. 前年度に構築した神経集団活動の次元削減+デコーディング解析により,サルの意思決定の嗜好性を十分に高い精度で予測でき,さらにこの結果が3頭のサルで再現可能であることを確認できた.また,当該手法により,光遺伝学手法を用いた腹側被蓋野-前頭皮質投射経路の選択的活性化実験によって得られた,回路特異的なサルの嗜好性の変化を捉えることができた.具体的には,腹側被蓋野からBrodmann area 6腹側部に投射する経路のうち,腹側部(area 6VV)への経路を活性化させるとリスク嗜好性が増大し,背側部(area 6VD)への経路を活性化させるとリスク嗜好性が低下するという行動の変化を,神経デコーダによって再現することができた.以上より,報酬依存的意思決定におけるリスクとリターンのバランスを決定する神経メカニズムを,神経回路操作および神経計算論の両観点から明らかにすることができた.上記の成果は,2024年1月にScience誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に構築したデコーディング解析が混合選択性を持つニューロンが豊富な前頭領域から複数のパラメータを同時に解読できること,およびその解析手法によって回路操作による行動の変化を予測できることを実証したことにより,本研究で解決すべき重大な解析的課題をクリアできたといえる.また,これらの成果をまとめた論文を発表することもできたため,進捗としては順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は構築された解析手法が眼球運動の制御を伴う意思決定に適用可能かどうか,また報酬を伴わない意思決定において,得られた知見がどのように関連しているのかを検証する.加えて,ヒトのデータと比較し,種間の行動の違いと神経表現との関係についても検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し請求分で購入予定であったVR用のヘッドマウントディスプレイについて,同一所属内で保有していた研究者がいることが判明し,2023年度中はそれを借りて予備データの収集を行ったため,購入はしなかった.本年度は研究代表者の所属機関が変更となり,改めて同一機材を購入する必要が生じたため,計画通り購入する予定である.
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