年次計画に基づき、病原性細菌のエネルギー生産を担っている重要酵素ナトリウム輸送性NADH-ユビキノン酸化還元酵素(以下NQR)の機能と構造を解明することを最終目標に定めて研究を行なった。 前年度に阻害剤結合型を含むNQRの3つ精密立体構造を報告したものの、依然として詳細な阻害剤作用機構や酵素反応機構は未解明のままである。そこで、酵素反応中間体を取得して各種反応機構を明らかにすべく、大阪大学の岸川博士とクライオ電子顕微鏡を用いた共同研究を行なった。未発表のデータであるため詳細は伏せるものの、酵素反応を中間体の取得に成功し、酵素反応過程における構造変化について重要な知見を得ることにことに成功した。この研究過程で得られた解析のノウハウについては、タンパク質科学会のワークショップでも発表の機会をいただきことができた。また、前年度に発表済みの成果に関してアメリカのニューハンプシャー州で行われたゴードン会議(生体エネルギー)の招待講演にて発表の機会をいただくことができた。 さらに、前年度に発表した基質UQ構造のNQRのナトリウム輸送と電子伝達の共役機構においる重要性についての研究も引き続き行った。本実験ではUQに機能性の構造を組み込んだプローブを用いてUQとNQRの相互作用や酵素反応機構に与える影響について解析を行った。加えてUQのNQRに対する結合位置を立体的に評価するべく構造解析も行い総合的にUQの機能について評価を試みた。
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