ニュートリノと呼ばれる素粒子にはニュートリノ振動と呼ばれる飛行中に種類を変える性質を持っていることが知られている.このニュートリノ振動において粒子と反粒子の性質の違い(CP対称性の破れ)があることが理論的に示されており,それが宇宙の物質反物質の非対称性の謎の解明の鍵になっている. 本研究課題ではニュートリノ振動測定の高精度化に向けて,T2K実験に参加し,新型検出器の開発及びニュートリノ振動解析に取り組んできた.当該年度ではニュートリノ振動解析を行った.特に私は本測定の大きな系統誤差の要因となっているニュートリノ反応モデルの不定性に着目し,解析における反応モデルの”選択”による潜在的なバイアスの評価を行った.反応モデルを変えた場合のシミュレーションデータを用いて.元々のモデルのシミュレーションデータの解析結果を比較し,最終的なニュートリノ振動パラメータの測定結果に与える影響を調べた. この解析結果としては,ニュートリノ振動におけるCP 位相については信頼区間を7%程度変えるが,最新の測定結果の主要な結論は変えないことを確認し,90%の有意度でCP 対称性が破れているという結果を得た. 本成果について国際会議Neutrino2022にてポスター発表を行った.現在博士論文を執筆中であり,今年度中に博士号を取得予定である.
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