銀河の中心部分に存在する超巨大ブラックホールは、その強い重力エネルギーを光へと変換することで、地球から観測可能な明るさの天体として、宇宙の歴史を知る上でヒントを与えてくれる興味深い天体である。超巨大ブラックホールの基本的な物理量であるブラックホール質量は、ブラックホール周辺に分布するプラズマガスの運動を観測することで計算される。しかし、プラズマガスの構造には未解明な点が多く、現在の研究には多くの仮定が置かれている状況である。本研究は、超巨大ブラックホールの光度変動を利用して、超巨大ブラックホール周辺のプラズマガスの分布構造を調査することを目的として遂行した。研究対象として、過去に30年間で4等級明るさが変化するという極端に大規模な光度変動を示した天体SDSS J125809.31+351943.0を選定した。対象天体のX線から中間赤外線までのアーカイブデータに加えて、せいめい3.8m望遠鏡を使用した可視光分光モニター観測を独自に実施し、それらのデータを複合的に解析した。それらの観測から、対象天体の中心核のガス分布構造や極端な光度変動のメカニズムを推定することに成功した。特に本研究によって、対象天体の中心部分にあるプラズマガスが2つの分離した領域に分布していると、従来の定説とは異なる性質が明らかになった。2023年度には、本研究成果に関する学会発表を2件、査読付き主著論文を1編出版した。
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