研究課題/領域番号 |
22J14755
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 清香 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 肝臓チップ / 胆汁うっ滞症 / 肝細胞 / 胆管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、胆汁うっ滞症の病態解明とそれに基づく治療薬開発を目指して、肝細胞と胆管を立体的に配置したヒト肝臓モデルの開発を行った。具体的には、生体模倣デバイスへ肝細胞及び胆管上皮細胞を播種し、肝細胞から肝内胆管に向かう胆汁酸の流れを再現できる「ヒト肝内胆管チップ」を開発した。2022年度は、上下に二つの流路(チャネル)を有するマイクロ流体デバイスを使用し、肝細胞としてヒト初代培養肝細胞を上側チャネルに、胆管上皮細胞として肝内胆管癌細胞株HuCCT1細胞を下側チャネルに播種した。免疫染色の結果、ヒト肝内胆管チップにおいて、サイトケラチン19陽性の胆管上皮細胞が管状の構造をとり、アルブミン陽性の肝細胞が胆管様構造に隣接していた。これらの結果より、肝細胞層および管状の胆管様構造を有する肝内胆管チップを構築できることが示唆された。ヒト肝臓において、胆汁の主成分である胆汁酸は胆管への輸送量が多いが、血清蛋白質であるアルブミンは胆管内へ輸送されづらいことが知られている。開発した肝内胆管チップがヒト肝臓における生理活性物質の選択的な輸送を再現可能か検討するため、肝内胆管チップの胆管チャネルへの胆汁酸およびアルブミンの移行量を測定した。その結果、胆汁酸は胆管チャネルへの移行量が多く、アルブミンはほとんど輸送されなかった。したがって、肝内胆管チップを用いて、ヒト肝臓における生理活性物質の輸送を再現できることが示唆された。以上の結果より、ヒト肝臓を模倣した三次元構造および機能を有した肝内胆管チップの開発に成功した。現在、胆汁酸トランスポーターを阻害することが知られている薬物をヒト肝内胆管チップに作用し、ヒト肝内胆管チップを用いた薬物誘発性胆汁うっ滞症を再現する検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、肝細胞から肝内胆管に向かう胆汁酸の一連の流れを再現できる新規ヒト肝臓モデル「ヒト肝内胆管モデル(肝内胆管チップ)」の開発を実施した。臓器チップ技術を用いてヒト肝臓構成細胞を培養することで、ヒト肝臓の三次元構造および機能を再現した肝内胆管チップを開発することに成功した。現在は、本モデルを用いて薬物誘発性胆汁うっ滞症の再現を検討中である。これらの研究成果により、胆汁酸が肝細胞から微細胆管構造を通って肝内胆管へ輸送されて肝臓外に向かう、胆汁酸動態をin vitroで評価できるようになった。肝内胆管チップを用いることで、胆汁うっ滞症をはじめとする様々な肝障害の病態解明および創薬研究が実施できると期待される。2022年度は、本研究成果に関して、原著論文を4報(うち筆頭著者として2報)、総説論文を筆頭著者として1報、和文図書を筆頭著者として1報発表し、学会発表を6回行った。以上のことから、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発した肝内胆管チップを用いて、様々な胆汁うっ滞症の再現および病態解明を行う。胆汁うっ滞症を引き起こすことが知られている薬物をコントロールとして、肝内胆管チップが胆汁うっ滞症の再現に有用かどうか明らかにする。また、肝内胆管チップにウイルスを感染させ、ウイルスが胆汁うっ滞症を引き起こすかどうか調べる。さらに、薬物作用およびウイルス感染によって生じた胆汁うっ滞症のより詳細な病態解明を行う。以上の検討により得られた知見を用いて、胆汁うっ滞症の治療薬開発に貢献することを目指す。
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