研究課題
本研究では、胆汁うっ滞症の病態解明とそれに基づく治療薬開発を目指して、肝細胞と胆管上皮細胞を立体的に配置したヒト肝臓モデルの開発を行った。具体的には、生体模倣デバイスへ肝細胞及び胆管上皮細胞を播種し、肝細胞領域から肝内胆管に向かう胆汁酸の流れを再現できる「ヒト肝内胆管チップ」を開発した。2023年度は、前年度までに開発した肝内胆管チップを用いて、胆汁うっ滞症の再現および病態解明を行った。まず、胆汁うっ滞症を引き起こすことが報告されている薬物をコントロールとして使用し、肝内胆管チップを用いて胆汁うっ滞症が再現可能か調べた。肝内胆管チップに薬物を作用し、胆汁酸濃度変化および細胞障害マーカーの発現量を評価した。その結果、薬物作用により胆汁酸輸送障害および細胞毒性が生じており、肝内胆管チップは薬物誘発性胆汁うっ滞症の再現が可能であることがわかった。次に、肝内胆管チップを用いて、ウイルス感染が胆汁うっ滞症を引き起こすのかどうか検証した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は様々な臓器に感染し、臓器障害を引き起こすウイルスであるが、肝機能に及ぼす影響は不明な点が多い。そこで、肝内胆管チップにSARS-CoV-2を感染させ、胆汁酸輸送量および細胞障害マーカーの発現量を評価した。その結果、SARS-CoV-2感染は肝細胞障害を引き起こすが、胆汁うっ滞症は引き起こさないことが判明した。以上の検討により、肝内胆管チップは胆汁うっ滞を含む肝機能障害の解明に有用であることが示唆された。これまでの検討により、臓器チップ技術を用いて、肝臓と胆管が三次元的に連結し、肝細胞領域から肝内胆管に向かう胆汁酸の流れを再現できる新規ヒト肝臓モデル「肝内胆管チップ」を開発した。本モデルによって胆汁酸輸送障害により生じる胆汁うっ滞症をIn vitroで再現可能となった。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Cell Research
巻: 1870 ページ: 119504
10.1016/j.bbamcr.2023.119504