研究課題/領域番号 |
22J14815
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横出 正隆 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | irAE / 免疫チェックポイント阻害薬 / 潰瘍性大腸炎 / バイオマーカー / 診断 |
研究実績の概要 |
はじめに、irAE大腸炎患者において、UC同様に抗インテグリンαVβ6抗体を有するかどうかELISA法を用いて検証した。対象としてはirAE大腸炎患者24例およびコントロール群として他臓器irAE患者、健常者の合計80例とした。irAE大腸炎は発症時に血清採取および内視鏡検査が同時期に行われている症例を選択した。ELISA法の結果、irAE 大腸炎では25%(6/24)において、抗インテグリンαVβ6抗体を有する一方でコントロール群では1.3%(1/80)しか同抗体を有していなかった(P=0.0005)。また、抗体陽性例の内視鏡所見は、陰性例と比較し粘膜はびまん性に侵されており、血管透見像の消失や易出血性などUCに類似する所見を呈していた。さらに、経時的に複数ポイントで血清が採取されている症例に関してはいずれも病勢(Mayo score)との相関を認めていた。臨床経過としても陽性例では、陰性例と比較し、有害事象共通用語規準(CTCAE) grade3以上の重度の大腸炎を有意に認めており(P=0.0065)、ステロイド難治性でインフリキシマブ投与が必要になるなど難渋した傾向を認めていた。次に、インテグリンαVβ6は癌抗原としても各種の癌に発現していることから、免疫染色にてirAE 大腸炎患者の原発巣での発現有無を確認することとした。その結果、抗体陽性例では100%(5/5)、抗体陰性例では50%(5/10)と抗体陽性例においてインテグリンαVβ6を発現している傾向を認めた。irAE大腸炎における抗インテグリンαVβ6抗体がB細胞レパートリーから産生されることを証明するために、健常者由来の末梢血単核細胞(PBMC)をインテグリンαVβ6や免疫チェックポイント阻害薬と共培養するも抗体産生を確認することが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では、irAE大腸炎における特異的な診断および病勢評価マーカーは存在していない。また、ガイドライン上、irAE大腸炎の診断や病勢評価にために下部消化管内視鏡検査が推奨されているものの、担癌患者において複数回の侵襲的検査は負担になる。本研究を通して、抗インテグリンαVβ6抗体はUC様のirAE大腸炎という限局的ではあるもののその診断、病勢評価マーカーとして有用である可能性が示唆された。一方で、現時点では、原発巣におけるインテグリンαVβ6発現と抗体産生の関連やB細胞レパートリーから同抗体が産生されるメカニズムに関しては、十分な検討ができておらず今後さらなる検証が必要であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きirAE大腸炎患者の血清収集を継続していく。また、irAEを発症していない癌患者の血清を集積しコントロール群として追加する。今回、irAE大腸炎の内視鏡像を検証するとUC様以外の内視鏡像を呈する大腸炎も多く認められたことから、これらの大腸炎においても、特異的自己抗体を有するかどうかも合わせて検証を行う。B細胞レパートリーからの抗体産生メカニズムに関しては、産生される抗体量が少ないことが予想されるため高感度ELISAを用いた検証や抗インテグリンαVβ6抗体のエピトープに着目しながら研究を進めていく。
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