研究課題
本研究の目的は,乳幼児期における腸内細菌叢の組成・多様性と気質・認知特性との関連およびその年齢ごとのパターンを明らかにすることである.腸内細菌叢と気質との関係を調べた研究は欧米圏を中心に蓄積されつつあるが,乳児期のものがほとんどである.腸内細菌叢の組成や多様性は,生後初期に急速に発達し,3~4歳頃から安定し始める.就学前期は,腸内細菌叢が成人の組成へと発達する重要な時期であるとともに,心理・情動に関する問題も増え始める時期である.しかし,この時期の腸内細菌叢と気質との間にどのような関係があるのかはわかっていない.そこで,本年度はまず,3~4歳を対象に,腸内細菌叢と気質との間にどのような関係があるかを検討した.腸内細菌叢は採便によって計測し,気質の評価には質問紙を使用した.その結果,酪酸産生菌であるFaecalibacteriumなどの腸の抗炎症と関連する菌が多く,Eggerthellaなどの腸の炎症と関連する菌が少ない児ほど,否定的情動性が低く,外向性が高い,つまり,ネガティブ情動の表出やストレス反応が低く,環境(他者・新規刺激)に対して積極的に接近・探索する傾向が高いことが示された.現在,この成果をまとめ,国際学術誌への投稿に向けて準備中である.また,欧米サンプルでみられた腸内細菌叢-気質の関連が日本人の乳幼児期においても再現されるかどうかを検証するため,収集した5ヶ月~2歳児のデータの整理を完了させ,分析の準備を整えた.さらに,各発達時期にどういった腸内細菌叢を持っていることが,その後の腸内細菌叢の発達や,気質・認知機能と関連するのかを明らかにするため,1回目の調査に参加した乳幼児を対象に縦断調査を開始した.
2: おおむね順調に進展している
研究成果の発信と,次の研究の準備を進めることができたため.研究成果の発信については,具体的に,就学前期(3~4歳)の腸内細菌叢と気質の関連についての研究成果を,2つの国際学会(IHMC 9th CONGRESS 2022 KOBEとSociety of Research in Child Development 2023 Biennial Meeting)で発表した.また,この成果を学術論文として国際学術誌で発表するべく準備を進めており,まもなく投稿予定である.次の研究の準備については,低月齢の参加児(5ヶ月~2歳)のデータ分析の準備が整い,縦断調査のデータ収集も開始した.
まずは,本年度に得られた研究成果を国際学術誌に投稿し,掲載を目指す.続いて,5ヶ月~2歳の腸内細菌叢―気質の関係を調べる分析を実施する.これらと並行して,縦断調査のデータ収集を継続し,1回目調査時のデータとあわせて分析する.
すべて 2023 2022
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)