研究課題
本研究の目的は,乳幼児期における腸内細菌叢の組成・多様性と気質・認知特性との関連およびその年齢ごとのパターンを明らかにすることである.腸内細菌叢と気質との関係を調べた研究は欧米圏を中心に蓄積されつつあるが,乳児期のものがほとんどであった.そこで,本研究では,具体的に次の2点について研究を実施した.(1)3―4歳の幼児を対象に,腸内細菌叢の多様性・組成と気質との間にどのような関係があるかを検証した.腸内細菌叢の多様性や組成は,生後初期に急速に変化し,3歳頃から安定し始める.この時期は,情動制御に重要な実行機能に関与する前頭前野が顕著に発達する時期と一致している.つまり,幼児期は子どもが将来持つ腸内細菌叢の基盤が形成される時期であると同時に,ヒトの精神機能の発達においても重要な時期である.にもかかわらず,この時期に腸内細菌叢と気質との間にどのような関係があるのかについては国際的にもわかっていなかった.本研究では,酪酸産生菌であるFaecalibacteriumなどの腸の抗炎症と関連する菌が少なく,Eggerthellaなどの腸の炎症と関連する菌が多い児ほど,ネガティブ情動の表出やストレス反応が高く,他者や新規刺激に対して積極的に接近し探索する傾向が低いことが示された.本成果は国際学術誌Developmental Psychobiologyに投稿され,現在2回目の査読を受けている.また,bioRxivでプレプリントとして公開されている.(2)1回目の調査に参加した乳幼児を対象に縦断調査を実施し,(1)で観察された腸内細菌叢と気質の関連が別のサンプルでも再現されるか,その子どもたちが1―2歳時点でどのような腸内細菌叢を持っていたかについて,後ろ向きに検証することにした.今年度でデータ収集が完了し,現在解析の準備を進めている.
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件)
Microorganisms
巻: 11 ページ: 2245
10.3390/microorganisms11092245
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2023.12.03.569811