研究課題/領域番号 |
22J14889
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 耕太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 格子QCD / エキゾチックハドロン / ハドロン分光学 / ハドロン間相互作用 |
研究実績の概要 |
近年になり、エキゾチックハドロンと呼ばれる奇妙な性質を持ったハドロンが実験で相次いで発見されており、量子色力学(QCD)の第一原理計算によるこれらの性質の解明が喫緊の課題となっている。 本研究は、格子QCDからハドロン散乱を解析する方法であるHAL QCD法と、有効的に適応可能と期待されている計算手法を組み合わせることで、メソン-バリオン散乱の解析によるペンタクォークの探索が技術的に可能な範囲を広げ、未解明のペンタクォークの性質を明らかにする。 本年度では、反K中間子-核子系およびπ中間子-Σバリオン系の結合チャンネル散乱の解析に着目し、相互作用ポテンシャルの振る舞いや散乱振幅の極からΛ(1405)粒子の性質を解明することを目標としていた。 まず、第一段階の解析として、3つのクォークの質量が等しい極限でのメソン-バリオン散乱の解析を行なった。これは、物理的に重要な性質を保ちつつ計算コストを抑えられるという利点がある。さらに、カイラル模型の先行研究から、この極限におけるΛ(1405)粒子に対応する散乱振幅の極の存在が示唆されている。したがって、この極限における3点相関関数を計算することで相互作用を決定し、得られた相互作用から散乱振幅を計算し極の探索を試みた。 得られた相互作用は強い引力成分を持つことがわかった。一方、3点相関関数が持つゼロ点由来の、有限の半径で特異的な振る舞いをしていることも発見した。さらに、得られた相互作用からシュレディンガー方程式を解いたところ、非物理的な束縛状態を持つことがわかった。これも同様のポテンシャルの特異性が原因だと考えられる。今後、4点相関関数を新たに計算し、3点相関関数と組み合わせて特異的な振る舞いのないポテンシャルを導くことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
得られた相互作用は強い引力成分を持つという知見を得ることができた。一方、ポテンシャルの特異的な振る舞いが由来の、非物理的な束縛状態が得られた。この問題の解決法として、新たに4点相関関数を計算すればよいことがわかったものの、本年度に目標としていたΛ(1405)粒子の性質の解明までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新たに計算する4点相関関数を、次年度で確保される計算資源を用いて計算予定である。これにより、物理的な束縛状態を引き出すことができ、Λ(1405)粒子の性質の解明が可能になると期待される。 その後、当初実施予定であるJ/ψ-核子およびηc-核子系の散乱の解析を行い、Pcペンタクォークに相当する極を引き続き探索する予定である。
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