2022年度は材料疲労試験に基づくGFRPの剛性低下モデルを開発し,GFRP桁部材のFEMモデルに実装した.2023年度は解析ケースをさらに増やすことで,載荷位置やΔnの取り方がGFRP桁部材の疲労損傷や残存剛性に与える影響を検討した.解析の結果,GFRP桁部材は活荷重応力が小さいため,一般部は疲労損傷に対して安全であることが明らかになった.解析モデルの検証のため,設計荷重を上回る載荷荷重のもとで解析を実施したところ,載荷面直下において上フランジの疲労損傷が先行して発生することが示唆された.さらに,Δnを細かくとるほど疲労損傷の広がりを精度良く表現できることを明らかにした.これらの知見を用いて,今後はGFRP部材の設計の際に,FEM解析を通して疲労損傷に対する安全性を評価することが可能となった. また,FRPの非破壊検査手法の開発では,2022年度から実施している静電容量の変化を用いた疲労損傷評価に関する基礎的実験を継続した.2022年度の実験では電極板のはく離が静電容量の低下に影響を与え,疲労損傷に対する静電容量の応答に疑問が生じた.そのため,2023年度は電極のはく離防止措置を講じたうえで,引張疲労試験を実施した.実験の結果,疲労損傷のうち樹脂内き裂に対しては,静電容量の変化は鈍感であることが明らかになった.一方で,層間はく離に対する感度については今後も研究が必要である.さらに,追加の検討として,2023年度は振動特性を用いた疲労損傷の評価も試みた.引張疲労試験の特定の繰り返し数で固有振動数や減衰を計測し,疲労損傷や残存剛性との関連性を調べた.実験の結果,固有振動数の変化は疲労寿命の40%以下に相当する初期のGFRPの疲労損傷を評価可能であることが示唆された.
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